こっこのビチグソがぁ〜っ
うちの店に取り立てに来る人は色々なタイプの人がいた。普通っぽく見えるおじさんや派手な感じの女性。親戚は外面は良かったらしいからうっかり絆されて貸してしまったのだろう。女性も中々に難しくて店先で「困っているんです!」と大声で泣き叫ぶのだ。はたから見れば完全にこちらが悪い人に見える。その親戚に泣きすがってほしいものだが、その親戚は一切連絡がつかない。だからうちの店に来るのだろう。
他にも登記などの公的文書を持って借金と返せという手の込んだ人もいた。そういう相手も中々やっかいだった。私は精一杯平気な顔をして対応した。奥で母が小さくなって怯えている。絶対に店内に入れてはならない。一歩も譲らないと仁王立ちするが、相手は成人男性。しかもなんか難しい言葉と書類で返済しろと圧をかけてくる。漢字ばかりの言葉なので何を言っていたか一切覚えていない。だから借りた相手の親戚に言ってくれ…
勉強は不得意だし、何なら人と話すのも得意ではない。こちらに敵意を持っている相手など恐怖でしかないが絶対入れるものかと生まれたての小鹿のような足をしながら対応していた。「こっこのビチグソがぁ〜っ」とか汚い言葉でも言えばいいのか??いやそれはない。いったいどうしたらこの人は帰ってくれるのか……
外回りから帰ってきた父が視界に入った時、安堵で腰が抜けるかと思った。私とその取り立てに来た男性の間にすっと入り私を庇う。「あれ父って白馬に乗った王子様?徳田新之助??」と錯覚する程かっこよかった。
父にも何やら難しい言葉で返済を求める男性。それに対してどっしりした声で「で?うちが返済する義務はあるんですか?」とだけ話す。さらに難しい言葉を投げかけ続ける相手に再度同じように「うちが返済する義務があるんですか?と言ってるんですよ」とだけ話す父。
父は180cm近くあってがっしりした体つきだ。大声を出すわけでもなく静かに話しているだけなのに存在感が半端ない。相手がどんどん小さく見える。最終的には「いえそちらに返済義務はありません」と小さく言いそそくさと帰っていった。
今まで幾度となく父には助けられたがこの日の父は最高にかっこよかった。「父さんかっこいい!!!」と目を輝かせて言ってしまった。父は「そじゃろ~」とどや顔をしてまた外回りに向かった。後日この日の話を父から聞いたが、実は父も生まれたての小鹿の足になって平常心を必死で保っていたらしい。そんな風に全く見えなかった。こんなかっこつけってあるだろうか。あの時の父のおかげで私も母もどんなに心強かったか。これが家族を守る人の背中か……と尊敬した。私もこうあらねばと思った。




