アリーヴェデルチ!(さよならだ)
就職試験の合否が出る前に、先輩から電話があった。「就職を断られたと聞いて」と申し訳なさそうに話していた。今就職活動中だと答えると「もし駄目だったら力になるから」と言ってくれたが「あんたなんもできんだろ」とイラっとした。一応先輩なのでそれは表に出さず「ありがとうございます」とだけ返した。
「アリーヴェデルチ!(さよならだ)」とかかっこよく言ってやりたいがそんなことをしても完全に無駄。当たり障りのない挨拶をして電話を切った。
その後も私が留守中に先輩から電話があったらしい。当時は自宅の電話がメインで携帯電話はごくごく親しい人にしか番号を教えていなかった為、先輩が私と連絡を取る時は自宅の電話だ。内容は「またボランティアに来てほしい」との事。先輩にとっての不幸はその電話に出たのが父だった事。父は敵も味方も多く、ガサツで声が大きい。しかも裏表がないので思ったことは全てきっちり飾らず言う。そんな父は私をとても大切にしてくれていた。勿論、施設に就職を断られた経緯も全て知っている。先輩のボランティアに来てほしいという内容は父の怒りを買った。「おたくの施設に就職したくて何年も通ったのにしょーもない理由で断られた娘は今必死で就職活動をしています。ボランティアする時間なんてありません」とバッサリ言ったらしい。もし私が電話に出ていたら絶対に言わない断り方だ。先輩には悪いことをしたがその後先輩から電話がかかってくることは無かった。
就職試験の合否もすっかり諦めていたので結果が書かれた手紙も深く考えずに開封した。そしたらまさかの合格だった。私のどこに合格要素があるのか理解に苦しむが受かったのならよかった。学生生活も残りあと少し。なんとか春から社会人になれることが決まって胸を撫で下ろす。
欲しかった資格も取得し、無事卒業。卒業アルバムは欲しかったら注文する形だったが特にほしいと思わなかったので買わなかった……ような気がするがそもそもアルバムがあったかどうか覚えていない。少なくとも手元にはないので無かったか買わなかったかどっちかだ。私にとっては資格を取るためだけの時間だったので特に必要性を感じなかったし、仲がいいのは教授とかの大人ばかり。写真を残したければ個人的に写真を撮っている。卒業式の後にパーティーがあると言われたがそもそも車で帰る必要があるので酒は飲めない。酒の飲めない飲み会なんて時間の無駄でしかないので出席せず。
思い返すと私の学生時代だいぶ寂しそうだが楽しむほど時間に余裕がなかったのが正直なところ。早く働きたかったし遊んでいる暇はない。社会人が多く所属する道場で武道を習っていたこともあって学校に対してはそんなに面白さを求めていなかったんだと思う。




