誰だってそーする おれもそーする
高校3年生になり、上下関係が厳しい寮内で一番高学年になった。進級する少し前からだが私たちの学年では今までの寮生活を変えようとする動きがあった。お風呂に入る時間や食堂の座る場所などのどうでもいいと思うようなルールを無くそうという試みだ。
お風呂の時間は夕方17時から20時までに。と決まっていたが寮の決まり事とは別の謎ルールとして早い時間は3年生だけが入るというものがあった。「一番風呂は目上に譲れ」という考え方だったらしい。しかし私たちが3年になる少し前からこの謎ルールを廃止したかった。というのは部活をしている生徒にとってお風呂に入れる時間帯は限られている。部活動が終わって夕食を取ってからお風呂に入ろうとすると大混雑しているのだ。夕食の時間も当然決まっている為、融通が利かないのだ。
部活動の為に遅くなるのは仕方がないが「一番風呂は目上に譲れ」という謎ルールのせいで部活をしていない生徒まで遅い時間に入るしかない。だから19時~20時の間のお風呂がとても混むことになる。脱衣室も大混雑だし、湯船につかる時間なんてない。早い時間に入れる生徒からとっとと入った方が合理的じゃあないか、という理由だ。みんながゆっくりお風呂に入れるのならそっちの方がいいじゃあないか。
「誰だってそーする おれもそーする」でしょ。
同級生たちや後輩たちにもこの謎ルールを廃止したい旨を話した。この謎ルールを廃止するには先輩後輩の意識を同時に変える必要がある。時間は少しかかったが、卒業するころには謎ルールは殆どなくなっていた。
もう一つは食堂の座る席。食堂の正面にはテレビがあるのだがそのテレビが見える席は上級生しか座れないというルールだ。この謎ルールも変えたかったがこれは難しかった。
食堂はお風呂と違い男女共用。女子だけが変えたいと思っても難しい。それにテレビのチャンネルを変える権利というのも難易度が高い。たくさんの生徒が見ているテレビを自分の好きなチャンネルに変えるなんて、ただ3年生というだけではできない。ある程度の心の強さが必要だ。「好きなチャンネルにしていいよ」と言われて「わかりました。ポチッ」とは中々できない。
それに付き合ってる男女は食事を一緒に食べるなどの楽しみがあってそういう場合は一番後ろの席で二人の世界を作るのだ。色々な行事の度に付き合ったり別れたりする男女の関係は、食堂の後ろの方の席を見れば分かるというちょっと面白い構図でもあった。食堂で一緒に食べる男女は付き合っていることを公表する意味合いもあってこれも中々難易度の高い行為なのだ。
なんとも色々な思惑が渦巻く食堂では年功序列の他にも兼ね合いが多すぎて謎ルール廃止を断念した。




