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でもウォークマンは好きだがね

 私の密かな恋心が粉砕してからというもの少なからず落ち込んだ日々を送っていたが、中学時代なら学校にも行っていなかったことを思えば毎日登校していたのだから偉かったと当時の自分を褒めてやりたい。


 当時の私は、人と自分を比べることをしてしまいがちだった。そしてその全てにおいて自分は劣っていると感じていた。そして人を羨み、各種の嫉妬もしてしまっていた。

 私より絵がうまい。スタイルがいい。顔がいい。成績がいい。友だちが多い。彼氏彼女がいる。

 等々、言い出したらキリがいない程に勝手に比べて劣等感にまみれていた。


「家が学校から近い」これも寮生活においては大きな羨まポイントだった。

 

 週末のたびに自宅に帰り一泊する生徒もいた。県内に自宅があるからこそできる事だ。

 家族が週末会いに来る生徒もいた。隣の県に自宅がある生徒だ。


 実家が一際遠かった私は帰省日以外で自宅に帰ることは無い。私の自宅は学校との間に何県も挟んでいる。交通費も時間的にも遠い距離だ。金銭的には特に両親に負担をかけていることを理解していたので「会いに来て」とは言えなかった。普段はホームシックには殆どならなかったが落ち込んでいるときは完全に私の味方をしてくれる家族が恋しかった。なので週末のたびにウキウキして帰る友だちに情けなくも嫉妬してしまった。


 落ち込みすぎると誰とも話す気になれず学習室にこもって絵をかいたり本を読んだりした。たまに勉強もした。「でもウォークマンは好きだがね」とか思いながら外の音が一切聞こえないほどの音量で聴きながら一人になった気分になっていた。


 しかしそんな時にふと目に留まった生徒がいた。今まで同じ部屋になったこともなくあまり話したことのない生徒だ。その生徒もよく学習室に来ていることに気が付いた。なんとなく話しかけてみると少し驚いてはいたがそこからよく話をするようになった。


 物静かで聞き上手なその生徒は心の拠り所を探してカッサカサの私の心に水を撒いてくれた。

 たわいもない話も、好きな人の話も、ちょっとした愚痴もお互いに少しずつ話すようになり割とすぐ仲良くなれた。その生徒は私の他によく行動を共にする友だちがいたので私は学習室で話すだけの時間だったがそれでも当時の私にとってかなりの助けになった。


 そして失恋の痛みなども忘れかけていたので、好きだった先輩と友だちが別れたことを知ってもそこまで動揺せずに済んだ。

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