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貧弱!貧弱ぅ!

 どこにでもいる平凡な小学生。それが私だ。平均的な体型と平均的な成績。アニメと漫画とゲームが好きでそこそこ友だちもいる。人を傷つけたりルールを破ったりしないようにと厳しく言われて育った。その為か正義感は強めで曲がったことが嫌い。自分の意見もちゃんと言える子どもではあったが、今思えばそんなに器用に立ち回れるタイプではなかったように思う。


 小学4年生の時に治安が良く教育に熱心んだと言われる地区に引っ越してきた。その地区の中学校は県内一番の進学高校への進学が一番多い中学校として有名だった。両親がそこまで期待していたかは謎だが実際近所の治安は良かった。引っ越し前は近所の問題で警察沙汰もしばしばあったことを思えば平穏な地区だったように思う。


 しかし、私の人生を揺るがす事件はその治安がいいとされる引っ越し先で起こった。


 小学5年生の時の担任は新卒の1年目。真面目そうで線の細い眼鏡をかけた男性だった。今の私が担任を見たら「貧弱!貧弱ぅ!」とか某名台詞を頭に思い浮かべそうな吹けば飛ぶような雰囲気の先生だった。

 私のクラスには運動や成績、容姿が優れているいわゆるヒエラルキートップのグループが存在していた。その中でも身長が高く美人の女子がクラスのトップに君臨していた。きりっとした目元は気が強いことを感じさせるものだったが当時の私は「美人だなぁ」くらいにしか考えてなかった。そして転校してきて1年の私はその女子は決して逆らってはいけない人物だと知らなかったのだ。


 新任の担任はとにかく字が汚かった。黒板に文字を書くのはとても難しいが、それを差し引いても汚かった。学校の先生は基本的に字が綺麗なので担任の字の汚さはとても目立った。授業中騒いだ生徒にチョークをぶつけて注意する方法も悪く目立った。しかも投げるのが下手だったので目的の生徒に当たらず関係ない生徒に当たることも多く、生徒の不満は募るばかり。私は特に注意される側ではなかったので「チョーク投げるの下手」くらいにしか考えてなかった。


 ただ担任に対する評価の低さはクラスの生徒だけでは留まらなかった。担任の字の下手さなどをほかの教師が陰口を言い始めた。小学5年生にもなると大人の会話の内容はちゃんと理解できる。担任がほかの教師に悪く言われていることを理解した私はとても嫌な気持になった。特に担任が好きだった訳ではないが持ち前の正義感が要らぬ仕事をしたのだと思う。「担任だって頑張ってるのにかわいそう」そんな庇護欲にも似た感情を持った気がする。


 新学年始まってしばらく経つとヒエラルキートップグループを中心に生徒の担任を舐めた言動が目立ってきた。黒板に書く文字を「汚い」と馬鹿にしたり間違って飛んできたチョークを大声で嫌がったり。逆に「あの生徒がうるさいからチョークを当てろ」と指示しておきながら担任が外すとコントロールの悪さを罵ったり。「そもそも生徒を注意するのにチョーク投げるのはおかしいだろう」などの真っ当な意見は出なかったあたり生徒も所詮子どもだったということだろう。


 クラスの様子はとにかく酷かった。当時は知らなかった言葉だが、学級崩壊そのものだったように思う。しかし当時の私は学級崩壊の言葉も知らなかったし「ほかの教師にも生徒にも馬鹿にされている担任を助けてあげなきゃ」と謎の正義感を燃やし始めていた。

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