養豚場のブタでもみるかのように冷たい目
合格通知が来てから卒業まで特別なこともなく、相変わらず行ったり休んだりしながら中学校生活を送っていた。高校入学の準備も少しずつ進めていく。
そして卒業式当日。
もうこのめんどくさい中学生活が終わるのだと思うと気分晴れ晴れ。寂しいなんて気持ちはミジンコほども無かった。卒業式中、先生たちの長くてありがたぁい話を右から左へと聞き流していたらふと前列の男子に目が留まった。中学に入ってからギリギリ私に聞こえる音量で私への嫌味を言っていた生徒だ。頭もよくて運動も出来て、整った感じの顔だが私の中にいい印象はない。その男子が肩を震わせて涙を流していたのだ。「え、あんなに私に嫌な感じの言葉を掛けるような人なのに?泣いてるの?」
養豚場のブタでもみるかのように冷たい目で私にぼそっと嫌味を言っていた顔を思い出しながら今肩を震わせる生徒を見る。っとそこでツボに入ってしまった。笑いがこみ上げて止まらなくなった。
しーんとした会場に時々四方から聞こえるすすり泣き……こんな中で笑い出すとか、いくら私でも悪目立ちが過ぎる。
必死で他のことを考えようと周囲を見る。すると周囲の生徒の中にも肩を震わせている生徒多数。散々私に酷い言葉をかけた生徒たちがしおらしくすすり泣きとか…あぁ駄目だ。どこを見ても笑いのツボにぶっ刺さる光景ばかりだ。目を閉じて他のことを考えようと努力するが、一度ツボに入ると急には止まらないのが笑いのツボというもの。下を向いてなんとかごまかそうと努力していると、隣にいたそこそこ仲のいい生徒が私をじっと見ている。養豚場のブタでもみるかのように冷たい目で私を見て「泣いてるのかと思ってたら笑ってるのね」と小声でツッコミ。ついにはその生徒まで笑いが止まらなくなり肩を震わせる。
周囲から見れば私も隣の生徒も泣いているように見えるかもしれないが違います。笑いを堪えています。
「卒業生退場」のアナウンスが流れ保護者席を通り退場するが、その際も笑いの我慢の限界がきている。というか笑ってる。参列していた母親も「なんであの子笑ってるの…」と苦笑いになったらしい。
卒業式の後の担任は実にあっさりしたもので小学校の時のように「乾杯」歌うとかもなく事務的な挨拶で終わり。この担任は裏切らないなぁと感心した。
こうしてなんとか義務教育を終えた。中学校の先生たちに「生徒は教育を受ける義務があるから義務教育なんだ」と散々言われた。そう言われて私は自分の義務を放棄しているんだと心底落ち込んだが、よくよく調べると義務があるのは生徒にじゃあない。保護者に義務があるということ。学校教育法に書かれている。生徒たちにあるのは「学ぶ権利」登校拒否だと言われていた時代だから仕方がないのかもしれないが、当時の先生たちは義務教育の意味をはき違えて脅迫の材料にしたように感じる。
とはいえ、その義務教育期間で学ぶ内容は意外と大人になってからも使う。
もし私が今異世界転生しても学校で勉強したおかげで知識がチート!なんていうこともないんだろうな…転生はしないと思うけどね。




