第4話〜一瞬の結末とギルドマスター登場!〜
俺とノルンが闘技場に着くと、リックがにやにやした顔で待っていた。
「おせぇぞ!早くやろうぜ」
「そう焦ったところであんたの負けは変わらんさ」
「クソがっ!」
「それではこれよりリックVSローウェンの試合を始める。審判は俺、ノルンが務めさせてもらう。お互い相手が死ぬような攻撃は禁止だ。そんな攻撃が見られたら即負けだと思ってくれ。あとは基本的には何でもありだ。勝利条件はどちらかが参ったと言って降参するかこちらの判断により戦闘が不可能になったと思ったら止めさせてもらう。双方、異論は無いか?」
「ああ。無いぜ」
「俺も大丈夫だ」
因みにベルトリスはアイテムボックスに入れてあるが使う気はない。
使っちゃうと下手すると相手を殺しちゃうかもしれないからな。
「では、試合開始!」
「死ねやぁ!」
リックはいきなり上段の構えから突っ込んできた。
(確かに当たったら痛いだろが当たらなければどうと言うことはない。それにしても遅すぎるな)
俺はひょいっと真正面からくるリックを躱してやった。
するとリックは怒りで肩が震えていた。
「てめぇ!避けんじゃねぇよ」
「避けるに決まってるだろ。何でも馬鹿正直に受ければ良いってわけじゃない」
俺は体内で魔力を練り、魔法を放った。
「行くぞ。<氷槍>」
俺の頭上に氷槍が5本現れ、リックに向かって飛んでいった。
「っちぃ。魔法使いかよ」
「それは少し違うな」
ノルンをチラッと見るとかなり驚いた顔をしていた。
(そういえば今の世界じゃあ無詠唱で魔法を使える奴は居ないんだったかな。ノルンはそこに驚いてるのか?)
リックは俺が放った魔法を全て避けていたが、すでに肩で大きく息をしていた。
「クソがっ!かなり厄介だな」
リックは自らの剣を握る手に力を込めた。
「まさか新人のガキにこれを使う事になるとはな。だが、これで終わりだ」
ノルンはかなり焦ったような顔をしていた。
「リック!一回止めろ!ローウェンが死んでしまうぞ」
ノルンの静止を聞かなかったリックの体からオーラが出始めリックの体を包んでいった。
「遅いねぇ。行くぞ!ガキ。スキル<三本気斬>」
リックがスキルを発動させると、奴の剣から衝撃波が3本現れて俺に向かってきた。
(良い攻撃だがそれまでだ。確かに今までの俺なら死んでるだろうが、今の俺は前世である賢者アークスのステータスや知識、持ってる全ての物を継承した後だ。だから、遅く見えるぜ」
俺はリックのスキルを身体強化を纏わせた木剣で叩き切った。
「なっ!?」
リックは自分のスキルが破れるられる事も、ましては木剣で叩き切られるとは思っていなかったようでかなりびっくりしてバランスを少し崩していた。
俺はそこを見逃さずに、身体強化を自らの体に纏わせ一気にリックめがけて駆けた。
(遅いな)
リックは何とか反応しようとしてたが今の俺には遅すぎた。
(リック。これで終わりだ)
俺はリックの懐に潜ると、木剣を横に薙ぎ払いリックの腹に目掛けて叩き込んだ。
「ぐはぁ!」
リックは結構な勢いで転がっていった。
相当のダメージだったのかリックは起き上がれずに倒れたまま気を失っていた。
「ノルン」
「ああ。この試合、ローウェンの勝ちとする!」
ノルンが宣言すると、見にきていた他の冒険者達から大歓声が上がった。
すると冒険者達の中から高身長中年くらいの男性が出てきた。
(鑑定によるとこの人がギルドマスターか。さて、ギルドマスターはどう動く?。受付にいたエリカの話だと元Sランク冒険者でみんなからの人望も厚いとか)
「いやぁ、良い試合を見させてもらったよ。エリカから話を聞いて直接話そうと思って表に出たらそこで伸びてるリックがお前さんと決闘をすると聞いてこっちに飛んできたよ。さて、自己紹介をしようか。俺の名前はヒュース・ロックベリー。ここのギルドでギルドマスターをしてるよ」
「俺はローウェンだ。元々貴族だったがつい先日追放されて、今はただのローウェンだ。だからあんたも俺の事はローウェンと呼んでくれ」
「これからよろしくな、ローウェン。俺の事も呼び捨てで呼んでくれ」
「ああ、こっちこそよろしく。ヒュース」
俺はギルドマスターであるヒュースと固い握手を交わした。
「じゃあ、ノルン。お前はそこに転がってるリックを医務室に連れてってやれ」
「はっ!分かりました」
「ローウェンは俺について来い。エリカに聞いたがステータスを書くのに別室が良いんだろ?俺の執務室を使うと良い。だが、俺とエリカは一緒に居て良いよな?お前がどんなステータスをしていようがうちから出て行けなんて勿論言わないがお前を守る意味でもギルドマスターである俺とお前の専属受付嬢をしてもらうエリカには見てもらった方がお前も都合が良いだろ」
「助かるよ。でも、良いのか?」
「何がだ?」
「専属受付嬢って確かかなり高ランクにならないと出来ないシステムだろ?」
「構わん。それにうちの馬鹿どもがいきなり迷惑をかけたみたいだからその謝罪の意味も込めてある。だから、遠慮すんなよ」
「分かった」
俺はヒュースと一緒に彼の執務室に向かった。
執務室に着いた俺は、ヒュースとエリカに見守られながら自分のステータスを紙に書いた。
ステータス用紙
<ステータス>
名前:ローウェン
種族:人間
レベル:1
筋力:5470
瞬発力:7200
魔力:754,370
魔法:火属性
水属性
風属性
土属性
炎属性
氷属性
雷属性
光属性
闇属性
無属性
特殊:回復魔法
契約魔法
鑑定魔法
索敵魔法
時空魔法
スキル:剣術“極大”
無詠唱
アイテムボックス
獲得経験値5倍
消費魔力半減
千本気斬
幻影刃
八岐大蛇
神眼
亜空断裂
超域化
空間跳躍
大賢者
物理攻撃耐性
魔法攻撃耐性
デバフ耐性
即死攻撃無効化
隠蔽
経験値:0/300
「ほら。これが俺の全てのステータスだ」
俺が自分のステータスを書いた紙をヒュースとエリカに見せると2人とも大きく口を開けて驚いていた。
「強いんだろうなと思ってはいたが、こればかりは予想以上だな。何でこんなステータスをしてるのか聞いても良いのか?」
「構わないが信じてもらえないと思うぞ?」
「いやぁ、俺は信じるぜ。エリカもだよな?」
「勿論です。ローウェン君なら信じられます」
「2人ともありがとう。あと、ここで見聞きしたものはここだけの秘密にしておいて欲しい。勿論必要な時は俺から言うよ」
2人とも頷いて約束してくれた為、俺は自分の身の上話をした。
「元々俺はライゼスト伯爵の長男だったんだ」
「そうなのか!?」
「ああ。だが、最初に成人の儀を受けた時はステータスが弱くてな。体裁を気にする父上から勘当されたんだ。因みに言うと喧嘩別れをしたわけじゃなく俺も納得いってる上での追放だから気にして無い。家督には元々興味なかったしな」
「その後どうなったんですか?」
「そのあとは家を出るまでの間にいろいろ準備しようと思って武器を買ったり食材を買ったりしたさ。そして昨日事態は急に変わった。俺は夢の中で一組の冒険者パーティーを見た」
「そのパーティーとは?」
「何と賢者アークスのパーティーだった」
俺が賢者アークスの夢を見たと言うとかなり驚いていた。
「それは本当か?」
「ああ。何ならメンバーも言えるぜ?女性がレティ、前衛の男性がザックだろ?」
「あ、合ってる」
「そしてここからが驚愕の事実だった。賢者アークスは俺の前世だったんだ」
「何っ!?」
「そして賢者アークスと意識の狭間で会ったんだ。あいつ、そうなるように魔法を組んでたらしい。それであいつの持ってる賢者としての知識やステータス、全属性の魔法、大量の魔力量を継承してもらったんだ」
「そうか...。それで賢者アークスは何か言ってたのか?」
「ああ。賢者アークスが封印したはずの魔王がいつかは分からないが必ず復活するらしい」
俺の口から魔王という単語が出た瞬間、ヒュースは足をがたがたさせ、エリカは気を失ってしまった。
「大丈夫か?」
「ああ。ちょっと待ってくれ」
「じゃあ、ヒュースが事態を飲み込み理解する間に俺は医務室にエリカを連れて行くよ。医務室はどこだ?」
「医務室ならここを出て左に行った突き当たりの大きなドアがある部屋だ」
「分かった。少し行ってくる」
「頼むぞ」
俺はエリカをお姫様抱っこで抱えると、医務室へ向かった。
エリカを寝かせた後、俺はヒュースの元に戻った。
「大丈夫か?ヒュース」
「ああ。突然の事でかなり驚いただけだ。それにしても魔王が復活するとはな。その話を国王や騎士団にするつもりはあるか?」
「今の所は言っても信じられないだろうし最悪の場合不敬罪や詐欺罪、虚偽申告罪かなんかで牢屋送りにされるだろうから言うなら俺が冒険者としてもっともっと成長して有名になってからだな。そうなったら話くらいは聞いてもらえるかもしれないからな」
「なるほど。そりゃ、そうだろうな。じゃあ、改めてよろしくな。冒険者カードは明日取りに来い。エリカに渡しておくからな」
「ああ。ありがとう。こちらこそよろしく」
俺は再びヒュースと固い握手を交わした後、ギルドを後にし転移魔法を使って家に帰った。
一度行った事ある所なら転移魔法で移動出来る為かなり楽になるのだった。