第3話〜蘇った前世の記憶とステータスの変化、そしてテンプレ〜
俺は夢を見ていた。
といっても自分の姿ではなく他人の姿をしていた。
(誰なんだ?)
すると横から声を掛けられた。
「大丈夫?アークス」
(この姿の人物はアークスというのか)
「すまないレティ。大丈夫だ」
(そしてこの女性はレティか。何でだろうな...。知らない筈なのに懐かしく感じるな。こいつらは冒険者パーティーなのか)
すると今度は前方から声が聞こえた。
「アークス!まだか?結構堪えるの大変なんだからな」
「すまんザック!もう少し耐えてくれ」
(あの前衛はザックというのか。そして戦況はかなり不利だな)
俺がそんな事を考えていると、アークスの声が聞こえた。
「ありがとうザック!良く耐えてくれた!下がってくれ」
「おう!」
ザックは返事をすると右後ろにバックジャンプをした。
(何だ?この魔力量は!?)
「行くぞ!<絶対零度空間>!」
膨大な魔力が込められた冷気は一瞬にして相手の黒いドラゴンを覆い尽くした。
流石の黒いドラゴンでもあの魔法はやばかったのか断末魔を上げる事なく絶命していた。
「流石はブラックドラゴンだな。まじで何回もやられると思ったよ」
「でも、アークスは強いわね。流石は賢者様」
「茶化すなよ。でも、それもザックが前衛で耐えてくれてたからだな。ありがとうザック」
「俺は俺の仕事をしただけだ。さぁ!帰って祝杯を上げるか」
「良いわねそれ!ギルドに報告したら飲みに行きましょ」
アークス、ザック、レティ、もう1人の女性の4人はブラックドラゴン討伐完了の報告をしに街に帰るのだった。
その直後急に周りが眩しく光り、俺は思わず目を閉じた。
眩しかった光が収まり、俺は目を開けた。
するとそこは花々が綺麗に咲く丘のような場所だった。
(ここはどこだ?)
(ここは精神の狭間の世界。君の意識だけをこっちに持って来たんだ)
(誰だ?)
(俺はアークス。この世界では賢者と呼ばれている魔法使いだ)
(アークスだって!?)
(ああ。そして俺は君でもある)
(どういう事だ?)
(俺は君の前世なんだよ。ローウェン君)
(!?俺の前世が賢者!!?)
(そうだ。そしてアークスとしての記憶を見ることが俺に会える発動キーだったんだ。そして俺に会えてるということは君は俺の賢者としての知識や全属性の魔法、そして大量の魔力量を継承する資格を得たという事だ)
(その力を託す代わりに何かを成してくれって事か?)
(理解が早くて助かるよ。実は俺達が封印した筈の魔王がまた復活するかもしれない。いや、100%復活するといって良いだろう)
(魔王だって!?)
(ああ。魔王は俺が封印したんだが、それが薄れて来てるんだ。だから、ローウェン君には魔王を倒してもらいたいんだ)
(俺がやるしかないのか)
(勿論今すぐって訳じゃない。君はこれから冒険者として色んな依頼を受けてどんどん強くなれ。賢者の力に振り回される事なくコントロール出来るように。そして1人では絶対勝てない。信頼出来る仲間を作ってそいつらと一緒に強くなれ!)
(分かった。俺がやるしか無いのなら頑張るよ!)
(流石は未来の俺だな。っと!そろそろやらないと時間がやばいな。ローウェン、こっちに来てくれ)
(ああ)
俺はアークスの方へ近付くと、頭を撫でてくれた。
(行くぞ!<我は賢者アークス。我の持つ知識、全属性の魔法、大量の魔力量をローウェンに託す!継承!!!>)
アークスが魔法を唱えると俺の頭の中にアークスの持つ賢者としての全ての知識と全属性の魔法、そして大量の魔力量が一気に流れ込んできた。
(これで終わったのか?)
(ああ。俺の全てをローウェンに継承した。ローウェン!頼んだぞ)
アークスはそういうと静かに消えていった。
(任せてくれ。俺がアークスでも出来なかった事をやってみせる)
俺はそこで意識が覚醒し、夢から覚めた。
(ここは俺の部屋か。あれは現実だったのかな?確認してみよう。<ステータス>」
俺の前に半透明の板が現れ、ステータスを写し出していた。
<ステータス>
名前:ローウェン・フォン・ライゼスト
種族:人間
レベル:1
称号:ライゼスト伯爵家の嫡男
筋力:5470
瞬発力:7200
魔力:754,370
魔法:火属性
水属性
風属性
土属性
炎属性
氷属性
雷属性
光属性
闇属性
無属性
特殊:回復魔法
契約魔法
鑑定魔法
索敵魔法(半径10km)
時空魔法
スキル:剣術“極大”
無詠唱
アイテムボックス(無限)
獲得経験値5倍
消費魔力半減
千本気斬
幻影刃
八岐大蛇
神眼
亜空断裂
超域化
空間跳躍
大賢者
物理攻撃耐性
魔法攻撃耐性
デバフ耐性
即死攻撃無効化
隠蔽
経験値:0/300
(やっぱりあれは夢じゃなかったのか。それにしてもこのステータスはやばいな...。流石賢者アークスだな)
(良し!そろそろ起きるか)
俺は顔を洗ってから、父上達の待つリビングに向かった。
朝食を食べた後、俺は昨日と同じように王都に来ていた。
因みにアークスから継承したステータスにあったアイテムボックスは容量無限に加え、中に入れた物の温度が変わらないという優れ物だった。
「良し。今日は食材や調味料、食器をある程度買って行こう。そしてその後冒険者ギルドに行って登録しよう」
俺はまず食材を買いに、商業区域のお店に向かった。
「こんにちは」
「あら!いらっしゃい。今日はどうしたの?」
「食材を買いに来たんだ。鳥のお肉と牛肉、それからイノシシの肉を10kgずつ頂戴。持って帰る方法はちゃんとあるから気にしないで」
「そうかい。ちょっと付いてきな」
肉屋のおばちゃんはそういうと裏に下がっていったので、俺もそれに付いて行った。
おばちゃんに付いていくと、そこには大きな倉庫があった。
「食材はここにあるよ。さっきの量だと金貨30枚だよ」
「分かった。ちょっと待ってね。...はい!丁度あると思うよ」
「確かに金貨30枚だね。じゃあ、好きなの持っていきな」
「ありがとう。じゃあ、どれにしようかな」
俺は3種類の肉を10kgずつ選んでアイテムボックスに入れた。
「ありがとうおばちゃん。また入り用が出来たら来るね」
「いつでもきな」
俺は肉屋のおばちゃんと別れた後にも香草類やきのみ、魚を購入しアイテムボックスに入れた。
俺は王都で昼食を済ませ、引き続き買い物をするために食器類を扱っている店に来た。
「いらっしゃいませ!今日はどんなご利用でしょうか?」
「大きめの食器を10枚と小皿を10枚、大きめのコップを5個下さい」
「かしこまりました。それでは、金貨30枚と銀貨7枚になります」
「これでお願いします」
「丁度お預かりします。それでは、少々お待ちくださいませ」
「分かりました」
店員さんは俺に軽くお辞儀をして後ろに下がっていった。
数分後、買った商品を持って店員さんが奥から出てきた。
「大変お待たせいたしました。こちらご購入された商品でございます」
「ありがとうございます」
「またのご利用をお待ちしております」
俺は店員さんに会釈をし、店を出た。
その後も調味料を買ったりした俺は、冒険者登録をする為冒険者ギルドに向かった。
(ここか。良し!行くか)
意を決した俺はギルドのドアを潜った。
中に入るとかなり酒の匂いがしたが何とも思わなかった俺はどんどんと中へ入った。
中に入った俺を周りの冒険者はかなり見てきた。
3つくらいの意味合いが読み取れる視線があり1つ目は「こんなガキが何のようだ?」と言う目、2つ目は「ここはお前のような奴が来る場所じゃねぇ」という目、そして3つ目は「今から冒険者登録するのかな?」という新人を見守るような目だ。
「お姉さん、初めまして!」
「あら?初めまして。冒険者ギルドにようこそ。今日はどのような用事ですか?」
「成人したから冒険者登録しに来たんだ」
「そうなのね。じゃあ、この紙に書いてくれるかしら?」
「これって全部書かなきゃだめ?」
「そんな事ないわよ。冒険者は切り札を隠しておくものだけど全部書いても構わないわよ」
「お姉さんちょっと良い?」
俺はお姉さんに近付くと耳打ちした。
「何かしら?」
「ステータスは全部書いても良いんだけど別室で書かせて欲しいんだよね。あと、ギルドマスターは信頼出来る人?」
「何かここだと不都合があるのね?分かったわ。マスターに聞いてみるわ。あとマスターは元Sランク冒険者だしみんなからの人望も厚い人だから大丈夫よ。それと私の名前はエリカよ」
「そっか。じゃあエリカ。お願い出来る?」
「ええ。少し待っててね」
そういうとお姉さんは離席中の札を自分の席に置いた後、裏へ下がっていった。
(いよいよだな。俺も早くSランクに上がって父上や母上、ラルトル達を安心させたいな)
俺がこれからについて色々考えていると、後ろから声が掛けられた。
「おいおい!ここはガキの来るところじゃぁねぇぜ。ガキは早く帰ってママのおっぱいでも飲んでなw」
「誰ですか?あなた」
「この俺を知らないとはな。俺はDランク冒険者のリック様よ」
「ランクが高いとあなたみたいな高圧的な態度を取っても許されるのか?」
「当たり前だ。冒険者っつうのは実力社会だからな。ランクが高いのは実力があるってこった。だからお前みたいなガキはさっさと帰ったほうがいいぜ?」
後ろで数人の男達がにやにやしながらこっちを見ていた。
(後ろの奴らも同じパーティーか?)
「ふん。Dランクだからってそんな高圧的だと弱く見えるな」
「何だと!?」
「冒険者のランクについては聞いたことがある。1番下のFランクから始まって1番上がSランクだよな?」
俺は周りにいたまともそうな男達に聞いたが皆が首を縦に振って頷いてくれた。
「Dランクって言っても下から数えたほうが早いのに偉そうな態度を取るってのはお門違いなんじゃないのか?」
「テメェ...!黙って聞いてりゃ舐めた態度ばっかり取りやがって!もう我慢ならん。付いてこい!俺様が教育し直してやる」
すると男はどんどんと裏に進んでいった。
俺は最初に声を掛けた男性に聞いた。
「ここには戦える場所があるのか?」
「ああ。奥に闘技場があって、本来なら冒険者になる為の試験をやったりする場所だ。でも、大丈夫か?」
「何がだ?」
「奴はああいう感じだが実力は確かにある。冒険者登録しに来たばかりのお前だったら厳しいんじゃないか?」
「心配してくれてありがとう。でも、大丈夫だ。そんなに心配なら審判をお願いしていいか?」
「勿論だ。じゃあ、軽く自己紹介と行こうか」
「そうだな。俺はローウェンだ。元々家名もあったが先日追放されてしまって今はただのローウェンだ。だからあんたもタメでローウェンと呼んでくれ」
「分かった。俺はノルンだ。これでもBランク冒険者だから何かあったら頼ってくれよ。俺の事も呼び捨てで良いからな」
「よろしくな!ノルン」
「こっちこそよろしくな。ローウェン」
俺はノルンと握手を交わして、ノルンと共にギルド奥にある闘技場に向かった。