岩魚のハート
春の光を受けてきらめく水面で
そのきらめきより力強く
命を輝かせ跳ねる岩魚
無邪気にはしゃぐ大人や幼子に
追い詰められ つかまるまいと
スピードを上げてその手をすり抜ける
歓声とともに投げ込まれたバケツの中で
流れることのない水に
なすすべもなく静かに呼吸する
係の人が慣れた手つきで命の雫を洗い流し
広げて見せた掌に
ぽつんと小さな粒
それが岩魚の心臓だと初めて知った
ほんのさっきまで輝く命を刻んでいた
生の証は とても小さく白かった
ごめんなさい ありがとう