しょう君は楽しい夢しかみない
しょう君はママが寝る時にお話してくれるお話が大好きです。
しょう君が風邪で寝込んでいる時にママは身体の中にある悪い物を倒す話をしてくれます。
しょう君がお友達とケンカした時は素直に謝って仲直り出来るお話をしてくれます。
しょう君のリクエストでしょう君がヒーローとなって悪者を退治するお話をしてくれます。
そのお話を聞きながら眠るとお話してくれた夢を見る事が出来ます。
だからしょう君は朝目が覚めた時に風邪を治す事が出来たし、お友達と仲直りが出来ました。
楽しいお話をした次の日は元気一杯で過ごす事が出来ます。
しょう君はそんな素敵な夢をみせてくれるママの物語とママが大好きでした。
だけどある日の事。
幼稚園から帰るといつもはリビングにいる筈のママがおらず、仕事に行っている筈のパパが顔を悪くしてしょう君を待っていました。
パパは「ママの身体の中に悪い病気があって、その病気をやっつける為に病院に入院する事になったんだよ」としょう君に説明しました。
それからママのいない日が何日も続きました。
ママのお話がない夜は寂しくって毎日の様に泣いていました。それでもパパが横で一緒に寝てくれるお陰で少しずつ寂しくて泣く日が少なくなりましたが、それでもママがお家に帰る事はありませんでした。
ママは病院のベットの上で何時も眠っています。
あんなに長かった髪の毛も病気をやっつけるお薬のせいで無くなって、今は毛糸の帽子を被っています。
ママが入院した当初はお話する事が出来ましたが、悪い病気のせいで起きてお話する事が出来ません。
お医者さんとお話をしているパパは何時も暗い顔をしていました。それでもパパはしょう君の前では暗い顔を隠して接してくれるのでしょう君は何も聞く事はしません。
しょう君は毎日眠っているママの手を握ってお話をします。
前にしょう君が夢の中で風邪をやっつけた時の様に、今度はしょう君がママにお話をする番です。
幼いしょう君は同じお話しか出来ません。
ママの悪い病気をしょう君がやっつけるお話です。それを毎日の様にママの夢に見れる様に一生懸命にママの手を握ってお話しました。
ある日の事。
しょう君は寝ている時にある夢を見ました。
しょう君のママの身体の中にある悪い病気が、ママの事をいじめる夢です。
しょう君は夢の中でヒーローになった時の様に、ママをいじめる悪い病気をやっつけようと頑張りました。しょう君だけでは中々やっつける事が出来ず、しょう君はパパやしょう君の大好きなヒーロー達にも助けを呼んで一緒にママの病気をやっつけました。
そしてママはしょう君に「ありがとう」と伝えて抱きしめてくれたのです。
朝、しょう君が目を覚ましてパパに夢のお話をして、「ママは絶対に元気になるよ」と言いました。
パパは「そうだね」とママが入院して以来見る事がなかった笑顔で返してくれたのです。
するとどうでしょう。しょう君があの夢を見て以来、ママの悪い病気が完治して元気を取り戻したのです。お医者様もびっくりする程の回復力でした。
そしてママは無事に病院を退院。その日の夜は親子三人で川の字で寝ていました。
ママは言いました。
「ママが病気で苦しんでいた時ね。夢の中でしょう君がママの悪い病気を退治してくれた夢をみたの。それもこれもしょう君がママの入院中ずっと語りかけてくれたお陰ね。本当にありがとう」
パパとママはしょう君の額にキスを落としてくれた事が嬉しくって、しょう君は眠りに着くまでずっとニコニコしていました。
その日の夢は勿論楽しい夢でした。
パパとママとしょう君の三人でしょう君が大好きなヒーローのショーを見ている夢でした。