ニワトリのデッカくん
世界のどこかに、動物たちが仲良く暮らしている国がありました。
イヌ、ネコ、オウム、ヘビ、ライオン、サル……みんな、同じ果実や野菜を食べて生きている……そんな仲良しな国でした。
そんな仲良しな国に、とある困った鳥がいました。それは、ニワトリ族のデッカ君です。
デッカ自身はとてもいい子なのですが、彼はそれはそれは声が大きくていつも周りをビックリさせてしまいます。
「デッカ君、もっと声を小さくしてよ!」
ごめんなさい!!!!!!
「心臓に悪いよ!」
ごめんなさい!!!!!!!!!!
謝るその声すら大きな声で、みんなは困ってしまいました。
みんなに申し訳ないと思ったデッカは、誰とも遊ばなくなりました。
喋る相手がいなければ、大きな声が出ることもありません。
デッカは1人、黙ったままの生活を続けました。
そんなある日、山の向こうからズシン、ズシンと大きな音が響いてきました。
音の主は、大男でした。お空の雲で顔が隠れて見えないほどの大男。
そんな大男の足が、国に近づいてきました。
動物たちはワァキャアと逃げ惑いました。大男は国を踏み潰しだしました。
家、森、学校をペチャンコにしていきます。わざと踏みつぶしていってるというよりかは、普通にただ通りすぎている感じに見えました。
そう、大男は大きすぎて自分の足元に国や生き物がいる事に気付いていなかったのです。
動物たちがワンワンニャーニャーガオガオと必死に「止まれ」「足元に国があるんだ」と吠えたり叫んだり鳴いたりしますが、大男の耳には届きません。
すると、デッカが「みんな! 耳をふさいでて!」と叫びました。
それすらものすごく大きな声でしたが、デッカ的にはこれは“小声”です。
デッカは波動砲みたいな大声で「大男さん止まって!」と叫びました。
その声の振動で森の木々や空気がビリビリと震えます。
しかし、大男の歩みは止まりません。
デッカは更に大声で「止まって!」と何度も叫びました。
デッカのくちばしの周囲が裂け、ノドからも血が出始めました。
大きな声の振動に耐えられなくなったデッカの全身の筋肉が裂けだし、デッカはみるみるトマト色になりました。
「ぼく゛だぢ、ごごに゛い゛る゛ん゛でず!!!! ぶま゛な゛い゛で!!!!!」
すると、大男の歩みが止まりました。
「あれ? こんな所に国があったんだね。ごめんなさいっ」
大男は、そろりそろりと後ろ向きに自身の足跡をふんでバックしていきました。
国の大半が踏まれてしまいましたが、動物たちはとても喜びました。
デッカありがとう!
デッカの声、すごいね!
みんながデッカにお礼を言います。
デッカはみんなからお礼を言われて嬉しかったのですが「どういたしまして」が言えませんでした。
デッカのノドは引きちぎれていました。
「どういたしまして」は血の泡としてしか変換されません。
そのまま、デッカは死にました。
みんなはデッカ程ではないですが、とても大きな声で泣きました。
以来、同じニワトリ族のみんなはデッカを見習って大きな声を出せるように練習を始めました。
いつかまた、アホな大男が来た時に、デッカのように身を呈して追い返せるようにと。