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ミツバチ

 宇宙に出ることのできなかった科学者が霊子研究に注力したのに対し、ISCO加盟の科学研究団体は軒並み「幽子(Spectron)」の研究へと舵を切った。宇宙に滞在し研究を続ける科学者は精鋭とも言えるエリートたちだ。質に関しては地球上の科学者を上回る。

 彼らが幽子研究として注目したのが「昆虫」である。昆虫のPSC(Psycho Strands Code:魂糸符)は人間よりも短い4つのPN(Psycho Nucleus:魂核子)が連なって構成されていた。PNは4種類あるので、PSCの種類は4の4乗(256)種類に過ぎない。狭い宇宙ステーションの中で幽子の研究をするのに打ってつけだった。

「よりによって『ミツバチ』ですか?」

 地球軌道上で地球から最も離れたラグランジュポイントに設立された「グラビサイエンス・量子幻影研究所(GraviScience Quantum Phantom Research Institute)通称:QP」の研究開発室。QPの所長が所員である科学者たちに研究方針を説明しているところだ。

「昆虫なら他にもたくさんいるじゃないですか。ミツバチだって針で刺すんですよ?毒だってあるんですよ?危なくないですか?」

「・・・まさか蜂蜜が欲しいから、っていう理由じゃないですよね?」

「いや、それもあるけどね」

 所員たちが(・・・あるのかよ)と心の中でツッコむ。

「知ってるかい?同じ巣のミツバチの中で1匹しかいない女王バチと他の雌の働きバチのDNAは同じなんだよ。同じ遺伝子を持つのに女王バチと働きバチに別れるんだ。ボクはPSCが何らかのカタチで作用していると睨んでる。クローネルさんみたいな『女王のカリスマ』的なものを女王バチのPSCが発揮しているんじゃないかと思っててね」

 所員たちが「クローン転生実験」を自らの体で行ったヴィクトール・クローネルを思い出していた。彼女は確かに「女王」だ。

「ミツバチの集団性とか統率力は『テレパシー』が関与していそうだし『熱殺蜂球』なんていう荒業も持ってるし、興味が尽きないよ」

「「「ねっさつほうきゅう!?」」」

 熱殺蜂球とはスズメバチが巣に侵入してきた際、数百匹のミツバチがスズメバチを球状に取り囲み腹部の筋肉収縮・翅の振動などを利用し中心部を50度近くまで上昇させ蒸し殺すというニホンミツバチ特有の必殺技である。

「ボクは『熱殺蜂球』はPK能力の一つ『パイロキネシス(Pyrokinesis:発火能力)』だと推測してるんだ。パイロキネシスは反霊子(Anti-Spiritron)が作用しているって言われてるだろ?この際だから『幽子解析』も『霊子回路』も『反霊子』も全~部まとめて一気にやっつけようかと思ってね」

「「「・・・・・・」」」

「大丈夫、大丈夫。宇宙じゃ昼も夜もわからないんだから。少しぐらい睡眠時間を削っても、気が付かないよ」

 QP所長の爽やかな笑顔に、所員たちは絶句した。



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