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クローン転生実験(2)

「この装置『魂の緒を切り離し、オリジナルから射出し、クローンに憑依させ、再生を確実にするための装置(Device for Detaching the Psyche-Soma Linking Thread, Projecting it from the Original, Possessing the Clone, and Ensuring Rebirth System)』を使うと、成功失敗に関わらず『魂の緒(プシュケとソーマを繋ぐ糸:Psyche-Soma Linking Thread)』を斬りとってしまう。つまり元の体には二度と戻れなくなってしまうんだ。成功してもクローン体と『魂の緒』を繋げるかは未知数だし、失敗すれば幽体となって彷徨うことになる。人間に実験するのは時期尚早だと思うよ」

 研究開発室にいる誰もが青ざめる中、ヴィクトールは優雅な笑みを携えたままだ。その笑顔がQP所長を苛立たせる。

「成功率83%ということは、6回に1回は失敗するんだよ。中世のロシアンルーレットみたいなものだ。ハイリスクローリターン極まりない。クローネルさんが老い先短い身であるなら百歩譲るけど、クローネルさんはまだまだお若いじゃないか。製作者として人体実験は許容できない」

「・・・お若い、ですか。ありがとうございます。所長の懸念は理解しますが、我がエクセル・バイオの解析に於いて、今回の成功率は100%です。そのためのクローン体を厳選して持ってきました」

「クローネルさん、凄い自信ですけど。100%の成功率というからには、失敗の理由の解析は済んでいるんですよね?聞かせてもらってもいいですか?」

「いいでしょう。まず他人のクローン体は90%以上の高い確率で失敗します」

「・・・逆に成功することがある方が驚きですね」

「それも理由を証明できますが、次に行きましょう。クローン体が幼体であっても失敗します。まあ、これは失敗でもないのですが」

「・・・といいますと?」

「幼体の脳は成長途上であり、脳が新たな刺激にて成長するたびに元の魂の記憶が改竄されてしまうのですよ。故に元の人格が保てなくなり、別人と化すのです」

「・・・なるほど。で、他には?」

「時間が経ち過ぎたクローンも失敗しやすいようです。これはPSC(魂糸符)が年齢や経験と共に変化していることが原因のようですね」

 研究開発室がどよめく。PSCが年齢とともに変化するという情報は初見だからだ。

「クローネル総帥、そのような情報はISCOにも届いていませんが?」

 アビオラCUEOがヴィクトールを睨む。

「まだ検証データが少なく、公式見解にできないのですよ」

 ヴィクトールの澄ました笑顔に、アビオラは苦虫を嚙み潰したような顔を見せた。

「私が厳選して持ってきたのが『7号クローン』という私の直近かつ成体のクローンです」

 エクセル・バイオの人間が金髪の少女が寝かされたストレッチャーを研究開発室に運んでくる。

「「「|え・・・?少女?《女性だったのか・・・?》」」」

 またしても研究開発室がざわめくのだった。




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