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実験当日

 QPの研究開発室。

 今夜の実験の舞台となる場所に、ヴィクトールはユリや秘書官を連れて実験前の最終チェックに訪れていた。迎えたのはアビオラCUEOとQPの所長と科学者たち、それからCAVAPの審査官だ。

「初めまして、クローネルさん」

 フランクに手を差し出したQP所長に対し、ヴィクトール以外のエクセル・バイオの人間が怪訝そうに眉をひそめる。視線に気づいたQP所長がやれやれという表情を見せた。

「ボクまで『総帥』と呼ばなければいけないですか?エクセル・バイオに所属してるわけでもないのに」

 まったく悪気のないQP所長に、ヴィクトールは笑顔で応える。

「そのままで構いませんよ」

「いやぁ助かります。ボクら科学者は研究室に籠もりっきりで、人と接しないですからね。世情に疎くて。ハハハ」

(それはあなただけだ)とアビオラは目で語り、(いっしょにするな)とQPの科学者たちの顔には書いてあった。

 多かれ少なかれ科学者という人種は変わり者であるというのは偏見に過ぎないが、このQPの所長はかなりの変わり者であることに間違いがない。


「この装置は安全なんだろうな?」

 アビオラCUEOが研究開発室の中央に置かれた装置を見ながら、QP所長に厳しめの口調で言った。

「あのねえ、アビオラさん・・・」

 QP所長の言葉に(いや、そこは「CUEO」をつけるべきだろ)(アンタ、ウチはISCOに加盟してるんだから「さん」はないでしょ)と科学者たちが内心でツッコむ。

「動物実験での成功率は83%で、人間での実験は今回が初めてですよ?『安全』なんて言えるわけないじゃないですか。『安全』というのは100%の成功率でなきゃ言えません。例え0.01%でもリスクがあったら『安全』ではありませんよ」

「いや・・・しかし・・・」

 涼しい顔で言うQP所長に対し、アビオラCUEOは渋い顔で総帥の顔を見る。アビオラの発言はヴィクトールを気遣ってのものだ。

「恐らく大丈夫でしょう」

 気遣われたヴィクトールは穏やかな笑顔だ。

「グラビサイエンスから提供された動物実験のデータは、全てこちらで解析し失敗の原因は推測できています。装置の欠陥ではなく、こちら側から提供した検体に原因があったようです」

「なるほど・・・」

 所長を含むQPの科学者が深く頷く。

「あの・・・」

 恐る恐るといった控えめな感じでユリが手を上げた。

「申し訳ありませんが、今夜は一体何の実験を行うのでしょうか?皆様の話が何をおっしゃっているのかわからなくて・・・」

 ヴィクトールがユリを見た後、周囲のエクセル・バイオの人間を見る。全員首を横に振っていた。

「総帥を差し置いて、私たちの口からは言えませんよ」

「そうでしたか・・・そうですね。私の口から言うのが筋でしょう」

 キョトンとしたままのユリの正面に立ち、ヴィクトールは今夜の実験の説明を始める。

「こちらの装置を使って、私がクローン体への転生実験を行います」



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