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実験前日

 QPは太陽を挟んだ地球の真裏のラグランジュポイントにある研究施設だ。大規模な粒子加速器の他に様々な実験施設と、それらを稼働させる核融合発電機を多数備えている。地球から数週間は要する距離にある為、訪問者は長期滞在することが多い。よってISCOはグラビサイエンスに代わって、同ラグランジュポイントにゲスト用宿泊設備を整備した。毎年のごとく拡張し、今では1000人のゲストが1年滞在しても問題ないほどの規模を誇っている。

 今回のエクセルシオン・バイオメディカルによる実験も1週間に渡るものとなっていた。初日は顔合わせのためのレセプションが行われ、2日目にユリとパートナーによるテレパシー実験。3日目は『GMCデバイス』を改め『PGC(Psycho Genome Capture)デバイス』による、テレパシー発信時のユリのPG(Psycho Genome)測定及び解析が実施された。

「ユリには重労働させ過ぎてしまいましたね。まだインターンの身でしかないにも関わらず、申し訳ありません」

「そんな!!総帥様・・・頭をお上げください。私は総帥様のお役に立てることが嬉しいんです。・・・リリーも同じだそうです」

「あなたたちは、いつでも繋がっているのですか?」

「そうですね・・・切ろうと思えば切れるんですが、そうするとリリーが心配してしまいますから」

「ユリは優しいんですね」

 ヴィクトールはユリをそっと抱き寄せる。

「あなたたちは私の宝です。来てくれてありがとうございます」

「縁って不思議ですね。こうなることが運命だったみたい」

「明日は私の番ですね。成功するように祈っててください」

「成功しますよ、必ず。私たちには視えますから」


 ユリが寝静まった頃を見計らって、ヴィクトールは自分の部屋に戻る。宿泊設備の一角はエクセル・バイオ専用となっており、部外者は立ち入ることが出来ない・・・はずであった。

ヴィクトールは自分の部屋の前に人影を見つけるが、意に介さずに近づいて行った。

「レディの部屋の前で待ち伏せですか?あまりいい趣味とは思えませんが?」

「ヴィーチェのことを『レディ』だと思っているヤツは、ここに来ている1割もいないだろうな」

「明日は全員が、私のことを『女』だとハッキリ認識するはずです」

「・・・絶対に成功するんだろうな?」

「それは製作者に聞いてください。私は『被験者』ですから」

「・・・・・・」

「そんな泣きそうな顔をしないでください。クワメらしくない。これも運命ですよ」

「ちっ、相変わらず男前でいやがる」

「クワメの前では『女』ですが?」

「・・・敵わないな」

「中に入ってください。最後の夜になるかもしれませんから」




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