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テレパシー(3)

 QPの大ホールの壇上。ヴィクトール・クローネル総帥と黒髪の少女ユリの他に、大きなデジタル時計が設置されている。

「こちらの時計は『宇宙標準時間』に合わせてあります」

 宇宙標準時間とは地球の日付変更線を0時として、ISCOが定めたものである。

「同じ時間を示す時計が、地球上の私共の実験会場にも設置してあります。時間を記録することによって、テレパシーの伝達速度が光よりも速いことを証明できるでしょう」

 ヴィクトールが時計の説明をすると、CAVAPの老齢の男性が壇上に上がった。

「私が今回の実験の評価の責任者です。地球上のエクセルシオン・バイオメディカルの実験会場にも、CAVAPが立ち会っています。先ほど確認したところ、時計に不正はないことを宣言します」

「宣言、ありがとうございます。これからテレパシー実験を行うわけですが・・・私共は実験内容を知らされていません。実験内容はCAVAPに全て任せていますから」

 ホールがざわつく。すると壇上のモニターに100分割された画像が映し出された。画像は風景に人物の顔、さらに幾何学的な模様や絵画、意味不明な文字の羅列まで様々である。

「この100枚の画像の中から順に10枚選んでもらいます。順番も含めて10枚全て地球側と一致させてください。選ぶのは地球側、こちら側のどちらでも構いません」

 これはテレパシー無しでは不可能だ、とホールにいる誰もが思った。

事前に知らされていない100枚の画像は風景、人物、模様、絵画、文字の5種類が20枚ずつ。言葉だけで違いを説明できないものも少なくない。距離的に不正は不可能なのは当然として、テレパシーの中でも少なくとも視覚を共有しない限り不可能だろう。

 ユリが手を上げた。

「すみません、質問があります。5種類を2枚ずつ選べばいいのですか?」

「いいえ、どれを選んでも構いません」

「でも、地球側の説明は『5種類を2枚ずつ選んでください』と言ってますけど?」

「「!!」」

 ホールの誰もが驚愕した。CAVAPの老齢の男性にとっての意味合いは多少違うものなのだが。CAVAPの狙いは「わざと地球側とQP側で別の指示を出す」という引掛けでテレパシーの真価を評価するものだった。本来はこの後でまったく別の指示を出す予定だったのだが、早くも見抜かれてしまったのだ。しかもリアルタイムで。

「記者抜きにしたのは、正解だったかもしれない」

 アビオラCUEOは呟く。大勢の科学者や関係者を地球から遠いQPまで招待したために、さすがに記者を招く予算までは確保できなかったのだ。

「・・・実験開始前に、すでに実験は終了したようなものだな」

 ホールにいる全ての者が、彼女たちのテレパシーが本物であると確信していた。



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