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テレパシー(2)

 太陽を挟んだ地球の真裏にある「QP」の大ホールには、ISCOのCUEOを始め名だたる研究者が集結していた。QPの所長と科学者たちはもちろんのこと、OSRCの主任、ノヴァアカデミーの助教授、さらに「トランスセンデンタル・サイコゲノム研究財団(Transcendental Psychogenomics Research Foundation)通称:TPRF」に研究者たちを派遣している研究団体の重鎮たちも集まっていた。さらに新しい科学現象の監視および検証を専門的に行う「未知現象評価検証委員会 (Committee for Assessment and Verification of Anomalous Phenomena)通称:CAVAP)」の姿も見える。

CAVAPは最近でも「魂情報:サイコゲノム(Psycho Genome)」関連の検証を行っており、「サイコゲノミクス(Psychogenomics)」の学際化に貢献していた。

 エクセル・バイオ・グループの総帥、ヴィクトール・クローネルがQPのホールの壇上に上がる。

「皆様、ようこそおいでなさいました。皆様にお呼びしたのは、今から私どもが行う実験の立会人になってほしいからです。恐らく、ご自分の目で見ても信じがたい実験になると思います」

「総帥はどのような実験をなさる、おつもりか?」

 CAVAPの一人である老齢の男性がヴィクトールに尋ねる。彼らが呼ばれた理由が、実験の監視と検証にあるのは明らかだからだ。

 エクセル・バイオの総帥は黒髪ロングの少女を壇上に呼び寄せた。

「こちらはノヴァ・サイキック・アカデミー(Nova Psychic Academy)の学生で『ユリ』というサイキックです」

 QPのホールがざわめく。

「彼女は彼女のパートナーとテレパシー(Telepathy)で、情報交換をすることが出来ます」

「情報交換?『念話ができる』の言い間違いではないのかね?」

「確かにテレパシー(Telepathy)とは念話という意味ですが、彼女が出来るのは念話だけではないのです。視覚、聴覚、嗅覚、味覚まで共有することが可能です」

QPのホールのざわめきが、より一層大きくなった。

「しかも彼女たちのテレパシーは距離と時間を問いません。この『QP』から地球にいるパートナーと、リアルタイムで情報交換ができるのです」

「「そんな、バカな・・・(信じられん・・・)」」

「リアルタイムなど、有り得ん!!光よりも速いなど、相対性理論が根底から崩れてしまうぞ!!」

ホールは騒然となる。たまりかねてアビオラCUEOが口を挟んだ。

「故に我々に立ち合いを望んだ、という訳だな?」

「さすがCUEO閣下。話が早いですね」

 壇上からのヴィクトールの視線を、アビオラは受け止める。アビオラは事前にヴィクトールから実験の話を聞いていたわけではない。それでも「エクセル・バイオがノヴァアカデミーと手を組んだ」という情報筋から、サイキックの実験を行うのだと予想はしていた。ただしここまで驚愕の内容だとは予想はしていない。

 アビオラは来たる「宇宙時代」を混乱なく統括すべく、ISCO(国際宇宙協力機構: International Space Cooperation Organization)を立ち上げた。しかし広大な宇宙では、情報のやり取りがネックになる。光速を越える技術は理論上まだないのだ。しかしヴィクトールの実験が本当ならば。いや、あの黒髪の少女がテレパシーを使い、地球とリアルタイムで交信できるのならば・・・

「これは・・・科学革命が起きるぞ・・・!!」

 アビオラは内心で冷や汗をかきながら、誰にも聞こえないように呟いた。



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