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テレパシー(1)

 ヴィクトールは同行者を連れて地球を離れ、大型宇宙ステーション「セレスGW」で高速シャトルに乗り換えている。

 目的地は「グラビサイエンス・量子幻影研究所(GraviScience Quantum Phantom Research Institute)通称:QP」。太陽を挟んだ地球の真裏のラグランジュポイントに設立された研究施設である。シャトルにはヴィクトールといつもの秘書官と護衛にOSRCの主任の他、アカデミーの助教授とテレパシストの双子の姉「ユリ」が同行していた。妹の「リリー」は「妖精」でお留守番だ。

 初めての宇宙に興奮している助教授とは対称的に、ユリは冷静に宇宙を眺めている。

「随分と落ち着いているのですね。まるで何度も来ているみたいです」

「・・・そんなこと、ありません」

 ユリは照れたように俯いた。

「あんまり、はしゃぎすぎると、リリーに笑われちゃうから・・・」

「・・・ひょっとして、今も繋がっているのですか?」

「・・・はい。総帥様の声も届いているはずですよ」

「私の・・・声?」

「・・・はい。声だけじゃなく、総帥様のお顔も見えていると思います」

「あなたたちの『テレパシー (Telepathy)』って、どういうものなんですか?」

「はい。見たもの聞いたもの、味や匂いまで、伝えることも、届けることもできます」

「それは・・・凄いですね。あなたたちに出会たのは、私にとって最大級の幸運ですよ」

「フフフ・・・嬉しいです。・・・あ」

「どうかしましたか?」

「リリーが羨ましがってます。総帥様と直接お話できていて、しかもお褒め頂いて」

「ではリリーにも伝えてください。『今度はリリーも同行しましょう。たくさん話を聞かせてください』と」

「フフフ・・・リリーが大喜びしてます。私には『はしゃがないで』と言ったくせに」

 ヴィクトールは微笑みながらも、内心で驚愕していた。シャトルは中間点を過ぎ、太陽を横切ろうとしている。地球との距離は、ちょうど1天文単位。光の速さで約500秒はかかる距離だ。それを二人はリアルタイムで会話をしているように見えた。つまり霊子は明らかに光よりも速いのだ。来るべき「宇宙時代」に於いて、何光年も離れた星間通信の問題は必ず発生する。「霊子通信」は問題を一気に解決できるだろう。

「クワメの泣いて喜びそうな顔が見えますね」

「・・・総帥様?」

「いいえ、何でもありません。ユリとリリーは私の『宝』です。いつまでも私の側にいてください」

「はい。総帥様に一生ついていきます。リリーも同じことを言ってますよ」

「ありがとうございます」

「いいえ。こちらこそありがとうございます」




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