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賊の解析

 エクセル・バイオの「妖精」の居住棟2階にある所長室は、臨時的な会議室となっていた。総帥、所長、秘書官の他、OSRCの科学主任、TPRFの研究員たちも同席していた。

「賊の身元を示すような持ち物は身に着けていませんでした。持ち物はわずかな金銭と、野球ボール大の爆弾数種。それからGMCスコープですね」

「GMCスコープ・・・」

「社長、まさか『PGCスコープ』と言い換える気じゃ?」

「いいえ、これは地球製の粗悪品です。幽子と霊子の識別もできない、文字通りのゴーストマターを見る装置ですね。逆に助かったかもしれません」

「そ、そっか。クローン体には幽子が無いから、高性能品だったら社長の作戦は失敗してたってことか」

「「「・・・・・・」」」

 一歩間違えれば総帥を失っていたことに気付いた会議室に沈黙が訪れる。


 静寂を破ったのは冷静な表情のヴィクトールだ。

「賊の生死は確認できましたか?」

「そ・・・それが・・・」

 TPRFの研究員が口ごもると、OSRCの科学主任が代わりに話し始めた。

「PSCを構成するPNなんですが・・・まあ、見てもらった方が早いですね」

 幽子(Spectron)であれば白く光り、空白子(Empteron)であれば半透明になるのだが。モニターに映ったのは灰色に濁った幽子らしきもの。周囲の霊子(Spiritron)が固まったまま動かないところは空核子(Void Nucleus)に似ているか。

「肉体は生命活動を維持しているので『仮死状態』、あるいは『植物人間』状態にあるものと推測されます。正直なところ、初めて見るものなので何とも言えないのですが」

「それは賊が超能力者ということは要因として考えられますか?」

「わかりません。私たちは超能力者のPSCを見たことがありませんし、そもそも超能力者など会ったこともありませんから」

「・・・そうですか。いや、そうでしょうね」

 ヴィクトールは一瞬だけ落胆した表情を見せたが、すぐに正面を向いて力強く言葉を発した。

「サイコゲノミクス(Psychogenomics)は最近立ち上がったばかりです。これからも次々と謎と新発見が繰り返されるに違いありません」

  会議室にいる面々は、総帥の一言一句を聞き逃さないように皆真っ直ぐに見つめる。

「ならば、謎も新発見も、全て我々が解析してやればいいのです。人類は今、転換期の岐路に立っています。我々が最先端から人類を導いてあげるのです。あなたたちが先鞭なのですから」

「「「はいっ!!」」」

 室内の全員が力強く返事をした。


「賊にアンチエイジング措置を施し、睡眠状態を維持。毛髪、血液、精子の採取と解析を急いでください。それからクローニングの準備を大至急。レプリカ作成も視野に入れて」

 総帥は矢継ぎ早に次々と指示を与えていく。室内にいた面々は指示を遂行すべく、5分と掛からずに全員が部屋を後にした。



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