表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/405

ヴィクトール暗殺計画(4)

 エクセル・バイオの研究施設「妖精」の最上階。総帥であるヴィクトール・クローネルのプライベートルーム。彼女は一人で紅茶を飲んで寛いでいた。不自由かと思われた車椅子生活にもすっかり慣れてしまったようだ。

 「探求者の手(The Abyss Hand)」から秘書官を通じて、ヴィクトールの元に連絡が来たのは1週間前のことだ。曰く「依頼通りに本物の超能力者を探し出したが、協力は期待できない。そちらに向かわせたので、あとは自分たちで何とかしてほしい」と。するとすぐさま翌日に、自分が乗るVTOLが爆破された。「探索者の手」の言う「向かわせた」というのは、そういうことだろう。秘書官は怒り狂っていたが、依頼は「探してほしい」なのであながち間違っているわけでもない。だからといって自分の依頼で自分が殺されかけるということに、釈然としないわけでもないのだが。

 「裏社会とはそういうところでしたね」

 人を呪わば穴二つ。裏社会に依頼するということは、そういうことでもあるのだ。自分たちに力があれば。具体的に言えば「探索者の手」を上回る情報力があれば、「探索者の手」に依頼などする必要が無いのだから。

 「まだまだ力不足を痛感します」

 ヴィクトールは独り言ちる。

 エクセル・バイオ創設時、初代が社長だった頃は「エクセル・バイオ」といえば裏社会を牛耳る立場だった。依頼する立場ではなく、様々な犯罪に手を染め依頼される立場であった。ところが合法手段の研究へと舵を切ると同時に、非合法手段を切り捨て外部に委託した。エクセル・バイオ内部に非合法を取り扱う部署は無くなった。

 「少々テコ入れが必要ですか」

 合法、非合法など地球上の法に則ったものに過ぎない。地球上の法が適用されない宇宙では非合法は存在しないのだから。来るべき宇宙時代に於いて、力は間違いなく必要だ。一番手っ取り早いのは「探索者の手」を丸ごと乗っ取ること。そのためには、まず・・・

 「できますか・・・ね?」

 ヴィクトールは秘書官を呼び出し、何事か指示する。

 「畏まりました」

 秘書官の女性がプライベートルームから退室するのを確認した後、ヴィクトールは車椅子をプライベートルームの窓際へと移動させた。眼下には滑走路が見え、墜落したVTOLの焦げ跡が見て取れる。

ヴィクトールを狙った超能力者は2マイル離れたところから爆弾を命中させる。能力として考えられるのは「テレキネシス (Telekinesis)」「物体送信(asport)」あたりか。「テレポーテーション (Teleportation)」も考えられるが、本人がVTOLのコクピットまで飛んでくるにはリスクが高い。


 ゴトッ。

 車椅子の車輪の近くに、何か物体が現れた。


 ドカーン!!

 激しい爆発音とともに、ヴィクトールのプライベートルームのドアが吹き飛ぶ。

 「総帥!!」

 秘書官が異変に気付き、吹き飛んだドアを飛び越えるように総帥のプライベートルームに入った。火災はないが、秘書官の目に留まったのはバラバラになった車椅子と、千切れ飛んだ手足と生首。血だらけのまま転がった頭部は彼女の崇拝する総帥のものだ。

 「いやああああっ!!」

 「妖精」の最上階に、秘書官の悲鳴が木霊した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ