降霊術解析(2)
OSRCの科学主任が報告を続ける。
「次に霊媒師が呪文のようなものを唱えるところです。注目してほしいのは霊媒師のPSCとPNです。PN内の幽子が徐々にクローン体に見られる『空白子(Empteron)』のように透明になっていくのです。さらにPN内の霊子のいくつかが霊媒師から離れ、初代様のPSCへと向かっていきます」
会議室の大きなモニターにPSCが変化していく様子が映し出される。
「初代様のPSCは霊媒師の霊子を取り込み活性化します。すると初代様のPSCは総帥の肩から離れ、霊子に導かれるように霊媒師の方に向かっていくのです。この時、霊媒師のPSCはクローン体の『空糸符(Void Strand Code)』と『空核子(Void Nucleus)』と似たように、幽子が『空白子(Empteron)』と同様に透明になり霊子の動きが停止します」
モニターでは霊媒師のPSCがVSCへと変化し、リオネルのPSCがVSCと接触しようとしていた。
「これから『降霊術』が始まるのですが、ここではわかりやすくするためにモデル映像に切り替えます」
モニターはA,B,C,Dと文字が書かれて色分けされた球体が、数珠つなぎとなっている映像が左右に分かれて表示されていた。左側の数珠には色が付いているが、右側の数珠は半透明だ。
「上から順に、ファスナーのようにPSCとVSCのモデルを融合させていきます。型が同じPNとVNは融合しますが、型が違うと融合しません」
左側のAと書かれた赤い球と右側のAと書かれた薄い赤の球が一つの赤い球になるが、左側のBと書かれた青い球と右側のCと書かれた薄い黄色の球は融合せずに二つの球のままだ。
「ここまでは予想通りだったのですが、D型だけが特殊なのです。モニターをご覧ください」
左側のDと書かれた黒い球が右側のBと書かれた薄い青色の球と接触するが、融合せずに二つの球のままだった。ところが左側のCと書かれた黄色の球と右側のDと書かれた薄い灰色の球と接触すると、一つの黄色い球として融合したのである。会議室がどよめきに溢れた。いつもは無表情のヴィクトールですら目を見開いている。
「VN-D型はPNのどの型とも融合するのです。霊媒師はPN-D型を多く持っていたためにVN-D型として、初代様のPSCの多くのPNと融合しました。具体的に申しますと、霊媒師のPN-D型はPSCの128個のPNの内、81個にも及んでいました。結果、89個のPNが融合し、約70%一致したPSCとなっています」
モニターには所々が二つに膨らんだ、歪な1本の数珠が表示されている。これが降霊術による憑依後のPSCということだった。
「初代様のPSCは数が少ないため、PSCの融合は霊媒師の顔周辺に限定されています。このことにより、初代様は総帥とお話をすることが可能になったのだと推測します」
「・・・これが『憑依』ということになるのですね?」
「はい。スピリチュアル学会に発表すれば、センセーショナルなことになることは間違いありません。画期的なエビデンスとなっていますから」
「わかりました。スピリチュアル学会にはISCOを通じて発表してください。TPRFの功績にすればよいでしょう。まだエクセル・バイオを表面に出したくはありませんから」
「・・・承知いたしました」




