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サイコゲノム

 ISCO(国際宇宙協力機構:International Space Cooperation Organization)は「魂糸符(Psycho Strands Code)」及び「魂核子(Psycho Nucleus)」を総称する意味の「魂情報:サイコゲノム(Psycho Genome)」を学術用語として制定した。サイコゲノムにはエクセル・バイオが発見したクローン体の「空白子(Empteron)」「空糸符(Void Strand Code)」「空核子(Void Nucleus)」も含まれる。そして「魂糸符(Psycho Strands Code)」は「PSC」、「魂核子(Psycho Nucleus)」はA~D型まであることから「PN-A」…「PN-D」とこちらも一般的な普及を狙い学術用語として制定した。

 これまでは「幽子(Spectron)」「霊子(Spiritron)」を総じて「ゴーストマター」と呼んでいたが、こちらはナディヤ・カザンスカが一般読者向けに作った造語であり、学術用語ではなかった。ISCOは「ゴーストマター」という俗語を廃し、「幽子(Spectron)」「霊子(Spiritron)」も「サイコゲノム(Psycho Genome)」の一分野としたのである。

 ISCOは続いて「サイコゲノム」の研究、解析、および応用に焦点を当てる学際的な分野を「サイコゲノミクス(Psychogenomics)」とし、「トランスセンデンタル・サイコゲノム研究財団(Transcendental Psychogenomics Research Foundation)通称:TPRF」という研究組織を立ち上げた。TPRFの構成員はISCO加盟研究団体の有志たちである。TPRFの本部はISCO本部「ISCOネクサスセンター(ISCO Nexus Center)通称:ネクサス」内で、実質は会議室ぐらいしかない。TPRFのサイコゲノム研究は各構成員が自分の所属している研究団体で行っていて、TPRFは研究成果を吸い上げ、精査し、検証の上で纏める組織なのだ。初代団長はISCOのアビオラCUEOが務めていた。


 チベットでの霊媒師による降霊術を体験したヴィクトール・クローネル総帥率いるエクセル・バイオの一行は、ユーラシア大陸の北端の「極東高度研究所(Far East Advanced Research Institute)通称:妖精」に戻っている。スタッフたちは忙しく動き回り、降霊術の映像分析を始めとする様々な分析や解析などに勤しんでいた。今回の降霊術の解析にはTPRFの研究員も派遣されている。それがTPRF団長であるアビオラCUEOの私的配慮によるものだと気づいているものは少ない。

 「社長!彼らの持ってきた機材が凄いです!解析があっという間に終わりそうですよ!!」

 興奮して喋っているのは「妖精」の若き女性所長。いや見た目が20代にしか見えないものの、真の年齢は50歳を過ぎる頃と噂されていた。彼女と旧知の中であるというヴィクトール・クローネルも同年代かと思われるが、ヴィクトールの場合年齢以前に男女の見わけもつきにくい。細身ながらも6フィートを軽々と超える高身長に、ウェイブのかかった短めの金髪。常に男性用のスーツに身を纏い、小顔で端正なマスクの目つきは鋭い。しかしヴィクトールはれっきとした「女性」だ。ドレスを着ればスーパーモデルと見紛うかのような美女となる。もっとも彼女がドレスを着るのはクワメ・アビオラの前でしかないのだが。

 ヴィクトールは澄ました顔で、紅茶を飲みながら所長の話を聞き流す。彼女たち二人の仲ではありふれた光景だった。




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