探索者の手
ISCOは新たなゴーストマターに関わる新たな情報を発表した。
今まで白い靄や煙のような存在だと思われていた「魂」が、実は細長い糸が絡まった綿のような存在であること。さらにこの細長い糸は粒子が連なって出来ていること。粒子は原子のような存在で、複数の幽子と霊子で構成されていることが新発表だった。
ISCOは粒子のことを「魂核子(Psycho Nucleus)」と名付けた。
「魂核子(Psycho Nucleus)」:中心に複数の幽子を持ち、周囲を複数の霊子が繋がって一つの魂核子を構成する。魂核子は幽子の数により現在4種類存在することが確認されている。4種類の魂核子をA,B,C,D型と呼ぶようにしたが、それぞれの役割までは解明できていない。
さらにISCOは魂核子が連なる糸状のものを「魂糸符(Psycho Strands Code)」と名付けた。「符(Code)」を付けたのは、DNAと同じように情報があると推測したからである。
「魂糸符(Psycho Strands Code)」:魂核子が128個繋がった糸状のもの。個体によって魂核子の並び方は違うものの、一つの個体(一人)が持つ魂糸符は全て同じものである。DNAと同じように個体の個性を示していると推測される。4の128乗(約1.158 × 10^77)の種類があると考えられることから、魂糸符は指紋や虹彩のように個人を特定できるだろう。
ISCOはさらなるゴーストマター解明のために、魂核子まで確認できる重力波の周波数と重力子線量、照射時間をも公開した。このことにより地球上でも新たなGMCデバイスが開発され、より活発なゴーストマター実験が繰り広げられるのである。
中東のとある都市の貧民街。エクセル・バイオの総帥であるヴィクトール・クローネルの秘書官の一人が、路地奥の建物に入っていった。ここは「探求者の手(The Abyss Hand)」と呼ばれる裏組織の窓口。
「探求者の手(The Abyss Hand)」とはどんな非合法な依頼も受ける組織だが、特筆すべきは科学的高度な依頼も受けるほどの組織力だ。古くは「核融合爆弾の改良」や「未曽有の殺人ウィルスの開発」なども手掛け、近年では「重力波の殺傷能力の解明」も彼らが暗躍していた。エクセル・バイオ創業当時から付き合いのある組織でもある。
「最近は随分と羽振りがいいようですね。私たちのことなんか切り捨てたのだと思ってましたわ」
「いえ。あなた方のおかげで、今の私たちがあると総帥は仰ってました。恩こそあれ、切り捨てるなど、とんでもない」
「口だけはお上手ですのね。総帥と名乗るお方は、さぞかし面の皮の厚い方でしょう」
「・・・総帥の侮辱は許しません」
「物騒なものはお仕舞いくださいな。冗談ぐらい聞き流してほしいものですわ」
「私は冗談を聞きに、伺ったわけではありませんので」
「はぁ・・・真面目過ぎると生き急ぐことになりましてよ?それでご依頼はどのようなもので?」
「霊的存在を媒介できる本物の霊媒師と、本物の超能力者を探して頂きたく」
「エクセル・バイオ様は、すっかりオカルトの虜になられたようで」
「・・・できないのですか?」
「私共にできないことはございません。半年ほど頂ければ」
「・・・なる早でおねがいします」