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幽霊撮影コンテスト(4)

 ISCOの本部である宇宙ステーション「ISCOネクサスセンター(ISCO Nexus Center)通称:ネクサス」ではスタッフが天手古舞いになっていた。

 「さすがに対応案件が多すぎるか」

 アビオラCUEOが独り言ちる。

 ゴーストマター関連だけでも「ゴーストマター観測装置」「ゴーストマター計測装置」の開発。ゴーストマター検証のための各種動物実験にゴーストマター実現化への取り纏め。反霊子まで含めるとアンチマターの仮説から実用化までのロードマップに、ブラックホールエンジン使用前提の「アンチマターバッテリー」の開発準備。さらに表沙汰にできないゴーストマターによるクローン開発支援。CUEOが一人で管理しているわけではないが、報告に目を通すだけでもバカにならない時間を取られる。

 しかも国家からの要請や、企業や研究団体の監査、加盟申請の審査などの通常業務も滞らせるわけにはいかない。一人のスタッフが何件も掛け持ちなのは平常運転。それでも限界突破はまもなく訪れるだろう。

 ISCOのスタッフは決して少なくない。加盟しているのが国家に企業、研究団体と多岐に渡っているので「少数精鋭」ではなく、ISCOは「多数精鋭」なのだ。アビオラCUEOの人望と人脈によるものなのだが、それでも人員は十分ではない。


 今回のISCO主催「幽霊撮影コンテスト」は博打のようなものだ。ISCOの理念は「地球上のことに関与しない」ことなのだから。しかし「反霊子」の発見は、宇宙での実験に期待するよりも地球上で探す方が合理的だ。地球での幽霊に関する事例は宇宙とは比較にならないのだ。「背に腹は代えられない」とまでは言わない。宇宙での実験でも、時間を掛ければゴーストマターの実用化まで漕ぎつけることは可能だろう。

 きっかけはエクセル・バイオの総帥「ヴィクトール・クローネル」の言葉「そろそろ『アメ』が必要です」にあった。総帥の主張は正論だ。ならば中途半端はよくない。重力波技術を地球に解放するならば、重力波を必要とするゴーストマターに関する案件も開放すべきだとCUEOは考えた。ただし地球側に丸投げはできない。よって「幽霊撮影コンテスト」に多数のISCO職員を回すことになった。現在の人員不足はこのためでもある。


 「みんな頑張れ。宇宙じゃ使いようがないかもしれんが、報酬アップは約束しよう」

 「お金なんかいいから、お肉食べさせてください」

 「あと美味いワインもよろしくです」

 「新鮮なサラダも付けてくださいよ」

 「みんな金より食い気か?」

 「毎日栄養食も太らないからいいんですけどね。たまには美味しいものを食べたいです」

 「酒も飲みたいですよ」

 「わかった。じゃあアンチマターが見つかったら、みんなで盛大にパーティをしような」

 「「「やった~!!」」」


 「幽霊撮影コンテスト」の成果は続々とネクサスに飛び込んでくる。その中には地球に派遣していたISCOスタッフよりの「反霊子発見」の報告も混じっていた。OSRによる検証と再現も確認済みだ。


 西暦2425年。ついにアンチマターである「反霊子」が発見されたのである。



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