光子と重力子
QPの休憩室で、QPの所長は未来エネルギーの若い科学者とグラビサイエンスの新人科学者と雑談をしていた。研究開発はチームワークが大切だ。個性と自己主張が強い科学者たちを纏めるのも、所長という責任者にとって大きな役割の一つである。
「そういえば君は『光子(photon)』研究を得意としてるんだよな?何で『光子』なんだ?」
QP所長は新人科学者に話しかけた。
「はい。実は子供の頃『光子力研究所』で働きたかったんです。超合金のロボットを作りたくて」
「「そっちかぃ!!」」
光子(photon)とは、物理学における素粒子の一つで光の粒子だ。グループはゲージ粒子に属し、量子論では「ボース粒子」と呼ばれる分類の量子である。光子は波動と粒子の性質を同時に持つことが量子力学に於いて示されており、光子の波動は電磁波となり、光子の粒子量は光の強さ(明るさ)となる。質量はゼロで波動は真空中において光速度で伝搬する。
電磁波はさまざまな波長(周波数)を持ち、電磁スペクトルと呼ばれる連続したスペクトルを形成する。このスペクトルには可視光、赤外線、紫外線、X線、ガンマ線などが含まれ、それぞれの波長の電磁波は異なる特性と用途を持つ。通信、光学、医療、放射線治療、電子機器など、さまざまな分野で電磁波は利用され、光子は現代社会になくてはならないものとなっている。
「重力子の基礎研究をやらせてもらって思ったんですけど、『重力子』って『光子』とそっくりですよね」
「まあ、どっちもゲージ粒子だし」
「いや、重力波は電磁波ほど利用されてないぞ」
重力波は2015年に地球上で初めて観測された。この歴史的な発見は、アインシュタインが一般相対性理論を提唱してから約100年後に実現したもので、2つのブラックホールが合体する過程で放射された高周波の重力波を観測したのである。これは電磁波を発生しないブラックホール研究に、大きな革命をもたらした。重力波は天文学にとって宇宙の謎や天体物理学の研究に大きな貢献をしたのである。
「そういえば重力子を重力波に変換する研究は、どこもやってなかったですよね?」
「重力波と言えば天文学の領域みたいなものだからな。重力子発見よりもかなり古い発見だ。重力子線ばかりに目が向いていたかもしれないな」
「重力波も光速で伝播するんですよね?やっぱりそっくりですよ」
「光子の量による光の強さが重力子の量による重力子線量だとすると、光子による電磁波は重力子による重力波ということになるのか」
「重力波だったら、時空の歪みを作れるんじゃないですか?」
「重力子が少なくても、高周波の重力波なら・・・可能性はあるぞ!」
三人の顔が興奮気味に赤く染まる。
「所長!ボクは重力子による重力波の発生モデルの構築をしますよ!」
「よし、私はISCOに重力子による重力波研究を地球圏で出来るよう説得しよう」
「え?え?」
新人科学者は二人の発想の速さについてくことが出来ない。戸惑う新人の頭を、所長は軽くポンポンした。
「君はゴーストマター研究に革命をもたらしたかもしれないな」