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エクセル・バイオ(1)  

 宇宙での科学者による実験対象が幽子と霊子になった頃、ISCOには次々と企業や研究団体からの加盟申請が届くようになった。

 特に研究団体にとってISCO加盟は魅力的である。研究団体がISCOに加盟する際の拠出金は、国家や企業に比べるとごく僅かでしかない。にも拘らず研究に要する資金は援助してもらえる上に、施設も格安で貸してもらえる。厳しい監査や研修成果の帰属などの制限はあるものの、真剣に研究へと没頭したい研究団体にとっては天国のような組織だろう。ただしISCOの活動は地球上には関与しないことになっているため、加盟後の研究は宇宙でするしかないのだが。

 一方の企業にとってのISCO加盟は、宇宙ビジネスを目論むならば避けては通れぬ道である。税金よりも高い拠出金を要求されるが、見込まれる利益も莫大だ。実際にISCO設立時の加盟企業は軒並み業績を上げている。宇宙物流大手の「セレス・ロジ」に高重圧力素材メーカーの「グラビテック」「アストロテック」、エネルギー業界では「エンリコンR」「F・E」「グローバルエナジー」、さらに軍需産業大手の「Aテック」など、様々な職種や企業に渡り枚挙にいとまがない。ライバル会社たちもこぞって加盟を申請している。


 新たな加盟申請企業の中に「エクセル・バイオ」の名前があった。

 「エクセルシオン・バイオメディカル(Excelsion Biomedical)通称:エクセル・バイオ」は2203年設立で、創業200年を超える老舗企業グループだ。病院のような名称だが医療行為は行っていない。エクセル・バイオが得意としているのはクローン技術と培養技術で、絶滅種の復活や絶滅危惧種の保存も手掛けていた。

 現在の主力産業としては食肉メーカーとなるのだが、通常の畜産農業とは生産方法がまるで違う。体外受精からはじまり、体外子宮も兼ね備えた培養カプセルによって、成体まで育成している。しかも成体になるまでの時間を半分にした上で、必要な部位の肥大化もできるという。牧場も飼料も必要としないエクセル・バイオの食肉製造技術は、宇宙時代の食糧事情にまさに打って付けと言えよう。

 医療業界がエクセル・バイオに協力を要請しているのだが、彼らは頑なに参入することを拒んでいた。エクセル・バイオの技術があれば、病気にかかった臓器をクローン技術により再生、移植することも可能になるのだが。真意は社長以外では幹部クラスでも知りえることが出来なかった。

 エクセル・バイオは創業以来、社長はクローネル家が務めていた。初代の「リオネル・クローネル」から10代目の現社長(総帥と呼ばれている)「ヴィクトール・クローネル(Victor Kronel)」に至るまで、一貫してクローネル家の一子相伝である。家どころか国家すらも跨ぐグローバルな時代にあって、異色中の異色とも言える企業グループがエクセル・バイオであった。


 エクセル・バイオのISCO加盟申請にあたり、クワメ・アビオラCUEOは自ら面接官になることを決めた。



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