瞬間移動検証(4)
「ではこれからモニター画像を見ながら、科学的な説明をさせてもらうよ。空いている席にかけてくれないか」
「え?説明なら受けたぜ?オーラがどうとか、ESPの『空間認知』をするとか・・・」
ブラキオの疑問にリリーが答える。
「さっきのは論理的な説明。これからするのは科学的な説明よ」
「どう違うんだ?」
「論理的な説明というのは、論理的な一貫性や合理性に基づいて説明をするの。明確な前提から、合理的な結論を導くプロセスを重視するのが特徴ね。さっきの話で言うと『瞬間移動をするにはESPの『空間認識』を使って現在の位置と目的地を正確に認識し、次に瞬間移動を行う際、意識を集中させることで自身の霊子をコントロールする』ということよ」
「そういえば結論は言ってなかったよな?」
ゼーの疑問にリリーが苦笑する。
「実はそうなの。論理的には『空間認識を使い、意識の集中と霊子のコントロール』で瞬間移動が成功してしまうのよ。だから科学的に説明する必要があるの」
「ボクから説明しようか。論理的な説明だと説明しきれないんだよ。コントロールした霊子をどう瞬間移動に結び付けるかがわからなくてね。『小宇宙を燃やせ』じゃわからないでしょ?科学的な説明は、観察、実験、および検証可能な証拠に基づいて説明を行う方法だよ。科学的手法に従ってデータを収集し、理論を検証するんだ。ヨウコ君のおかげで、いいデータが取れたよ」
カインが満面の笑みで言う。
「できれば霊子や反霊子を定量的に測定できる機器があれば、なお良かったんだけどね。近々開発してみるよ」
「先生、定量的って何だ?」
「数値化するってことよ。アンタもここのメンバーなんだから、それくらい知りなさい!!」
「まあまあ・・・リリー君はブラキオ君に厳しいよね。とりあえずみんな座って」
解析室の正面の壁には大型のモニターが多分割され、各々様々なデータと映像が流れている。モニターの前は解析するためのシートが3席あり、中央はコの字型にテーブルが配置されていた。カインとリリーは解析用のシートに座り、ゼーとブラキオはコの字型のテーブルの両脇に座った。
「私にも見せてもらいましょう」
「クローネルさん」「総帥様」「総帥さん」「あ・・・」
解析室のモニターの一つに映ったのはヴィクトール・クローネルだった。
「・・・前にもこんなパターンあったな」
ブラキオが呟く。
「今度は『盗み見』と言われないように、最初から参加しますよ」
ニッコリと微笑むヴィクトールの目は笑っていない。先日の3Sの解析の時に、ヴィクトールはカインに「ズルいなぁ、クローネルさん。いつから盗み見していたんだい?」と言われたことを踏まえているのだ。ヴィクトールを良く知るリリーとゼーは肝を冷やす。
「ハハハ、クローネルさんは意外と根に持つタイプなんだね」
ヴィクトールの威圧にも似た笑顔を、さらりとかわすカインだった。
「ではこれから瞬間移動の科学的説明をするよ。各自大型ヴィジョンか目の前のモニターを見てくれたまえ」