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瞬間移動実験(5)

 瞬間移動実験の三日後の朝、佐藤洋子は屋外のテラスで朝食を食べている。

「すごいね~ここは、モグモグ。朝が来ると、ちゃんと明るくなるんだね、モグモグ」

 アステロイドベルトにある錬金術研究所はα基地、β基地の両方とも「GBUシステム(Gravity Controller and Black Hole Engine Unified System=重力コントローラとブラックホールエンジンの統合システム)」を中心に据え、常に地球上と同じ1Gの重力がある。加えて「GU(Gravity Urbanization=人工重力都市化)計画」の実験も兼ねているので、森林の成長のために低感覚に設置された50mほどの高い鉄塔の人工灯が昼と夜とを作り出していた。重力シールドで覆われた重力フィールド内は、地球の大気と同等の空気がある為に気軽に屋外にも行ける。

「はいよ、姐さん。食後のコーヒーだ。インスタントだけどな」

「ありがとう、ブラキィ、モグモグ。ここは私が暮らした『冒険者』とはだいぶ違うね、モグモグ。宇宙じゃなくて地球にいるみたいだ、モグモグ」

 洋子の言う「冒険者」とはエクセル・バイオが以前保有していた、地球と月のラグランジュポイントにあった研究施設である。「トーラス型」と呼ばれるスペースコロニーに酷似していたため、冒険者にも1Gはあるものの屋外はない。当然、昼も夜も無く、窓から見えるのは地球と月と星空だけだ。ちなみに宇宙で見える太陽は、地球から見た太陽よりも1.36倍も明るくなるため太陽側に窓はない。

「それにしても姐さん、よく食うな~。バランス栄養食を、そんなにバリバリ食うヤツ、初めて見たぜ」

「美味しいじゃん。いろんな味があって。チョコにバナナにチーズにポテサラ。ピザ味もイケるよね、モグモグ」

「それにしたって食い過ぎだろ?5人前ぐらいか?」

「しょうがないよ。瞬間移動をするとお腹が減るんだよ?結局4回も瞬間移動をやっちゃったんだから」

 瞬間移動実験は1回目のインターバルの後、カインとリリーがカメラや測定機器を増やしてから2回の瞬間移動を洋子は披露した。洋子は目に見える範囲でしか瞬間移動が出来ないため、2mの至近距離とアクアクリスタルの部屋の隅から対角の隅への2回だ。さらにインターバルを挟んで追加の1回も披露している。洋子は実験の後、すぐにベッドに横になり60時間爆睡したのだった。

「ごちそうさま。リリーとカイン先生はまだ寝てるのかな?」

「あ~、あの二人はずっと解析室に籠ってる。寝ないでいろいろ調べてるぜ」

「え~っ!?寝てないの!?死んじゃうよ?」

「2体のクローンを交互に転生すると、寝なくても平気なんだと。オレはまだクローン転生できねえから寝てるけどな」

 すると屋外のテラスに、手を振りながらリリーが走ってやってきた。

「ヨウコさん!!お待たせしました!解析終わりました!!すぐに解析室に行きましょう!!」

「あ・・・ごめん。ゼーと代わってもいいかな?お腹いっぱいになったら、眠くなってきちゃった。アハハハ」

「え~・・・せっかくヨウコさんにも見せたくて頑張ったのに」

「ごめんね、リリー。でも私は見ても聞いてもよくわからないよ?難しい話は全部ゼーに任せることにしてるんだ。アハハハ」

「もう・・・しょうがないですね、ヨウコさんは」

 笑顔で許すリリー。

「ごめんね。今度新しいスィーツの話をしてあげるから。ちょっと着替えてくるよ」

 洋子がテラスから建屋内に戻り、姿が見えなくなったところでリリーはがっくりと疲れた様子で肩を落とした。

「大丈夫か?お嬢」

「体は大丈夫なんだけど、めっちゃ疲れたわ・・・早くフカフカのベッドで惰眠したい」

「お嬢も二重人格だったら寝れるのにな」

「ユリとこっそり入れ替わろうかしら・・・」



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