表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
245/405

リオネル・クローネル(13)

 20年という月日は長い。

 これまでリオネル・クローネルのコールドスリープは10年だった。技術上、安全にコールドスリープから覚醒できるのが最長10年だったからである。しかしリオネル4度目のコールドスリープへ入る頃は、技術革新により20年のコールドスリープが可能になった。できるだけ先の未来をこの目に焼き付けたいリオネルは、迷いなく20年のコールドスリープを選んだ。それが例えリオネルの第一世代のクローンの寿命を越え、死に立ち会えなかったとしても。

 クインテットと呼ばれた第一世代のクローン5人は、全員88歳で亡くなっていた。間違いなく遺伝子の影響。つまりリオネル・クローネルの寿命も長くて88歳までということを意味していた。コールドスリープから目覚めたリオネルの肉体年齢は84歳。実質残り4年の命である。自信の寿命を悟ったリオネルは、何故か晴れやかな笑顔を見せたという。

 第七世代のクローン15人はそれぞれ医者への道をしっかりと歩んでいた。世界各国の有名医大でトップの成績を収め、将来有望な医師になると期待されている。15人の内5人は、育ての親からリオネル・クローネルのクローンだという出生の秘密を告げられていた。彼らは自分が人体実験に使われていたことを知り、憤り、ショックを受けた。しかし自分の優れた頭脳はクローンだからこそであり、普通に生まれてここまで優秀な成績が出せるだろうか。長らく後継者に恵まれなかった医者である親は、自分が将来を担う医師になることを喜んでいる。さらにこの人体実験に於いて、リオネル・クローネルからは何一つ拘束されていないし、何かを返さなければいけないとかの条件も無い。医師になろうと決めたのは周囲の環境と、何よりも自分の意思である。誰かに強制されたわけではないのだ。

 冷静な判断と周囲の説得により5人は逆にリオネルに感謝の気持ちを抱くようになり、卒業後はエクセル・バイオの資本関連する病院に勤務することを希望した。報告を聞いたリオネルは、終始笑顔であった。


 リオネルの次世代のクローン作成を禁じられたクローンたちであるが、クローン実験そのものは続けていた。リオネルが眠っていた20年で、世間のクローンに対するイメージが変わりつつあった。エクセル・バイオがクローン家畜による畜産の工業化を、世界中に展開した影響が大きかったのである。

 24世紀の地球。大きな戦争は無かったものの、局地的な紛争や戦争、テロなどは絶えることはなかった。緩やかな人口増加に加え、開発という名の環境破壊は一向に留まることを知らない。度重なる事故による原子力エネルギー全面禁止の決断は、逆に化石燃料への回帰となり地球環境を蝕んでいく。大気は慢性的な汚染状態となり、安全な食料というものが徐々に減りつつあった。

 食糧難の国と地域が増える中、エクセル・バイオのクローン食肉産業は各国の救世主となる。受胎から育成まで大気に触れることのない食肉は、自然の中で育てた食肉よりもむしろ安全なのである。クローンに対する世間の忌避感というのは薄れつつあった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ