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リオネル・クローネル(12)

 第五世代クローン10人による畜産の工業化。科学者と工学者である彼らが着手したのは、人工子宮の開発であった。クローン胚を母体の子宮ではなく機械で育てるということである。人工子宮そのものに問題は無かったが、産まれた子供全てが眠ったように動かなかった。牛、豚、羊、馬など、どのような動物でも動くことが無かった。原因は不明だったが彼らは原因を突き止めようとはしなかった。眠ったままなら眠ったまま成体にして出荷してしまえばいいと、人工子宮をそのまま成体まで育成できるように改造したのである。成体まで動かないのであれば、広大な牧場は必要なくなるのだから。彼らは育成カプセル内で動かない動物を、食用に向くよう研究に研究を重ねていった。


「原因不明の理由を突き止めずに、育成カプセルを改造したのか?・・・科学者らしくない」

「科学者である前に、彼らはエクセル・バイオの人間なのですよ。原因不明を解決することにお金と時間と労力を追求するよりも、会社にとって利益になることを優先しただけです」

「これはまた・・・利己主義的なリオネル殿のクローンとは思えない考えだな」

「それだけ魂から来る『個性の違い』というのは大きいのですよ」

「現在なら人工子宮で生まれた動物が眠ったまま、というのは理解できるのだがな」

「当時は『幽子』も『霊子』も良くわかっていませんでした。まだ『魂』を科学的に解明できていませんからね」

「つまり人工子宮で生まれたクローンには魂は宿らないってことだな」

「魂情報とも言える『PSC(Psycho Strands Code=魂糸符)』が発見されたのは最近のことですから。わからなくても致し方ありません」

「科学者というよりは工学者に近かったのだな」


 リオネル・クローネルが第七世代のクローンを医学者にしたのは、第一世代のクローンが80歳を越えた高齢になったからだ。80歳を越えると多かれ少なかれ持病を抱えるようになる。リオネルも第一世代のクローンも内臓は比較的健康なものの、心臓機能に若干の衰えが見られるようになっていた。全員が似たような症状を持つことから、遺伝子から来る体質的問題なのだろう。第七世代が高度医療を身につけることによって、リオネル自身の治療と延命に役立てようとの目論見だった。

 第七世代のクローンは最初から子供や後継者に恵まれない医者への養子として育てることとした。数ある職業の中でも医者の子が医者になるケースは多い。彼らなら必ずIQ300の子供たちを、最先端医療を身に着けた医師へと育ててくれるだろう。しかし懸念もある。リオネルのクローンは、今までエクセル・バイオ本社のある南海の島国で育てていた。この国はすでにリオネルとエクセル・バイオの傀儡のような国であり、国際法を無視し国内法によるクローン規制は無い。だが養子として預ける医者たちは国外在住の者がほとんどだ。エクセル・バイオとしての係わりの痕跡は隠蔽しているが、リオネルの遺伝子は隠しようがない。何らかの形でクローンたちに法の手が伸びることもあり得なくはなかった。

 リオネルはクローンたちに次世代のクローン作成の凍結を命じたあと、リオネルは4度目のコールドスリープへと入ることとなる。今回のコールドスリープは20年。第一世代のクローンは寿命が尽きている可能性が高い。クインテットがいなければ、エクセル・バイオが世界的大企業になることは難しかっただろう。今生の別れを惜しむようにクインテットとリオネルは細やかなパーティを開くのであった。



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