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リオネル・クローネル(11)

「スペシャリストのクローン化か・・・ビジネスになりそうじゃないか」

「世の中には好きなスポーツ選手の子を産みたいと願うファンは多いですからね。クローンならば血の繋がりはなくとも、その選手そのものを子供として育てることが出来るわけです。さらに全盛期のスキルを併せ持つとなれば、本人を越えることも可能かもしれませんし」

「クローンがオリジナルを越えるのか?」

「幼少期よりスキルを持っているのですよ?超える可能性は十分あるでしょう」

 ヴィクトールが紅茶に口を付ける。

「・・・噓は良くないな。口元がニヤけているぞ」

「ヘイゼル相手では誤魔化せませんね。・・・可能性は限りなく低いです」

「・・・理由もあるのだろう?」

「超一流のスポーツ選手というのは『心・技・体』の全てが超一流なのです。クローンで手に入るのは『技・体』の二つでしかありません。肝心の『心』つまり魂は別人ですから。身体能力がいくら高くても、超一流になれないスポーツ選手などゴマンといます」

「確かに・・・ではビジネスになりにくいと?」

「需要は多いと思いますよ。芸能人のクローンで大成させる必要が無ければ『心』はあまり関係ないですからね」

「では何故、総帥殿はビジネスにしないのだ?」

「違法ビジネスだからです」

「おや?非合法的手段を厭わない、総帥殿の言葉とは思えんが?」

「どうもヘイゼルは私を誤解しているようですね。私が必要としていることが、たまたま法に触れてしまっただけです」

「・・・そういうことにしておこうか」

 二人はお互い静かに微笑む。

「違法でビジネスをするつもりは今後もありませんよ」

「違法に頼らずともビジネスは順調、だと言いたげな表情だな」

 ヴィクトールは黙って紅茶に口を付けた。


 スペシャリストのクローン化の第一弾として、リオネルは第五世代の中で医学の道に進んだクローンを第七世代のドナーに選ぶ。リオネル・クローネルの遺伝子はそれほど器用さが高くないが、知識と冷静さと判断力が秀でているため外科医としても優秀だ。彼のクローンを幼少期から医療の道へと進ませる。例え器用でなくとも「体が覚えている」というアドバンテージは大きい。子供というのは得てして、他の子よりも自分が優れていることについて好きになる傾向が強い。おそらくリオネルのどの遺伝子を使っても、医療の道へと進んだ結果は大差ないだろう。しかし幼少期より自ら「好き」になるのと、親にやらされるのでは成長過程が大きく変わる。将来的に外科技術は他の天才たちに抜かされていくだろう。しかしそれでいいのだ。リオネルの遺伝子はただ優秀なだけではない。人を率いる統率力に秀でているのだから。自分より優れた技術を持つ人間を使いこなせばいいのだから。



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