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リオネル・クローネル(10)

 10年後、三度目のコールドスリープからリオネルが目覚めたとき、第一世代の「クインテット」と呼ばれた5人のクローンはリオネルと同世代となっていた。共に80歳を越えたばかりではあるが、健康状態は良好でまだまだ現役で活躍できるだろう。とはいえいつまでも現役でいては後進が育たない。クインテットは引退し、エクセル・バイオは30歳になったばかりの若い第四世代が「クインテットⅡ」として引き継いだ。第二世代、第三世代を飛ばしての大抜擢と言ったところだが「我らクインテットが初代からエクセル・バイオを継いだのは、今の彼等よりも若い20代中盤だった。余裕だろ?」とクインテットはコメントを残している。コメントを聞いたリオネルは笑っていた。

 一般人に育てられた第三世代のクローン10人は、全員エクセル・バイオにて重要な役職に就いている。彼らが「クインテットⅡ」をサポートするのだろう。

 科学者として育成された第五世代のクローン10人は、エクセル・バイオ開発部門の中核を成していた。生物学、物理学、医学、化学など様々な分野のエキスパートである彼らの役割は大きい。さらに半分である5人のクローンは科学者から工学者へと転身している。技術革新無くしてエクセル・バイオの繁栄は有り得ないからだ。エクセル・バイオの動物クローン事業は畜産を根本から変え、世界の食肉事情を担い始めている。今後は畜産を工業化することに注力していた。牧場のような広大な敷地を必要としない、工場による大量生産を目指しているのだという。リオネルは目を細めて報告を聞いていた。

 多様なドナーによる第六世代の報告には、リオネルも驚きを隠せなかった。

 以前リオネルが手掛け、様々なドナーを用意した第三世代のクローンには大きな違いが見られなかった。違いが環境によるものなのか素質の問題なのか、判別できなかったからだ。

 多様なドナーを用意した第六世代20人は、9歳にして大きな違いが見られた。芸術系と運動系のクローンの遺伝子を使用したクローンは、9歳にして能力の片鱗を見せたからだ。芸術系のクローンの幼少時に初めてピアノを触らせたところ、滑らかな指捌きでドレミファソラシドと奏でてみせたという。運動系のクローンは走るフォームが最初から綺麗だった。ラケットやボールなど道具を扱うスポーツをやらせてみたところ、初心者とは思えない動きを披露した。

 遺伝子は肉体の形質の情報を持つ、タンパク質の設計図である。単純に言えば「肉体の設計図」である。後天的に肉体が覚えたスキルを、遺伝子が記録したということであろう。まだ試してはいないものの、裏社会に生きるクローンの遺伝子であれば拳銃の取り扱いとか射撃に秀でる可能性が高い。

「スペシャリストのクローン化」

リオネルは不敵に笑った。



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