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リオネル・クローネル(9)

 2人のクローンに裏社会を厳しく鍛え上げる一方で、リオネル・クローネルはクインテットと同じ環境で育ちながらも過度な競争心により仲の悪かった5人のクローンに、第五世代のクローン作成の全てを任せることにした。彼らには「第五世代のクローンには科学者を目指させろ」と方針を告げる。「勝てば何でもいい」という過度な競争心は、時に倫理を疎かにすることがある。リオネルはそこにマッドサイエンティストの影を見た。IQ300の素質を持つ科学者。リオネル自身は科学を本職としてはいないが、それでも最先端の科学を理解することはできたからだ。産まれたときから本職の科学者を目指させたら、どんな結果をもたらしてくれるだろうか。期待に胸を躍らせ、リオネルは再び10年間のコールドスリープに入る。

 10年後に目覚めたリオネルは、裏社会で頭角を現し始めた素行の悪い2人のクローンをクインテットに引き合わせる。元々は最高の頭脳になる素質を持った2人が、裏社会だろうが活躍するのは必然だ。裏社会の厳しさを知ったことによる倫理を越えた柔軟な発想は、クインテットにはないものだった。小さく纏まりつつあったエクセル・バイオの発展に2人は必要なものだと、リオネルはかねてより思っていた。

 すでに70歳近いクインテットも素行の悪かった2人の変貌に、少なからず驚いていた。2人があまりにも礼儀正しかったのである。裏社会というのは一部の例外を除き、トップになるほど表面上の礼節は大切にする。力関係を冷徹に判断し、無暗に敵は作らず、損得と命を大事にするからだ。命は手下が賭ければいい。40歳半ばで裏社会に生きる2人のクローンは、将来的に裏社会を牛耳れそうな雰囲気をも醸し出していた。


「そういえばあなたも礼儀正しいですね、ヘイゼル」

「私と裏社会の者を一緒にされては困る。そもそも私の魂を構成する同胞たちは、方向性は違えど皆知識人なのだ。それに私が作られた目的は『人間らしくあること』だ。総帥殿は礼儀正しいのも人間らしさの証明だとは思わないか?」

「そうですね。人間らしさを失っていないからこそ『怪物モンストローゾ』という異名を受け入れているのでしょう」

「フッ・・・よく見ている」


 リオネルはクインテットが裏社会に生きる2人を受け入れたことで、三度目のコールドスリープに入る。第四世代のクローン5人も全員エクセル・バイオに入社し、すでに「クインテットⅡ」と呼ばれるほどの実績を上げようとしている。基盤は整った。

 第六世代のクローン育成を、リオネルは再びクインテットに任せることにした。クインテットが最初に手掛けた第四世代は、成功であり失敗でもある。裏社会をも受け入れ70歳を越えたクインテットは、経験を重ねたことでようやくリオネルの考えを汲み取ることが出来るようになった。リオネルの遺伝子とクインテットの遺伝子だけでなく、芸術系と運動系の2人のクローンの遺伝子、さらに裏社会2人のクローンの遺伝子もドナーとすることを提案した。ドナーの後天的なスキルがクローンに反映されるかどうかの検証だという。おもしろい・・・実に面白い。リオネルには無かった発想だ。だが、それでいい。

 リオネルはクインテットがオリジナルである自分を凌いでいることを、すでに認めていた。



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