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リオネル・クローネル(4)

 リオネル・クローネルはクローンを営利目的利用する「エクセルシオン・バイオメディカル(Excelsion Biomedical)」社を起業し、非合法的な手段も摂りながらも僅か20年でクローン業界のトップとなった。「出る杭は打たれる」とばかりに妨害や横やり、乗っ取りやスパイなど様々な危機を幾度となく迎えたが、明晰な頭脳と的確な判断、さらに裏社会を上手く利用することで乗り越え大きくしてきた。一心不乱に会社のために心血を注いだリオネルは、子供はおろか結婚もしていない。

 クローン研究のために作った自分のクローンが初めての子であり、クローンのためのレシピエントとして妻に迎えた若い女性たちが初めての結婚ということになる。結婚と言っても書類だけの婚姻関係で、結婚式も無ければ一緒に暮らすことも無い「愛のない結婚」でしかないのだが。

 当時のリオネル・クローネルは30歳になったばかり。初婚でいきなり5人の若い女性と結婚し、すぐに5人の子供を作ったということになる。リオネルが個人でクローン研究をしていることを知らない者から見れば「会社が大きくなってハーレムを作った。リオネルは好色だ」と思う人間も社外社内問わず少なくなかった。


「・・・皮肉なものです。クローンによる受胎は高度な体外受精のようなものですから。リオネルはレシピエントの女性とは性行為どころか手も握らなかったと言われています。ハーレムとは程遠い生活ですね」

「リオネル殿の家族は黙っていなかったんじゃないのかな?親や兄弟、親族とか」

「・・・リオネルには肉親は存在しません」

「存在しない?その言い方だと亡くなっていたとかではなく『産まれたときから居ない』と聞こえるのだが?」

「・・・いえ、ヘイゼルの言う通りです。リオネルには最初から肉親がいないのです」

 ヘイゼルはヴィクトールの言った言葉を思い出す。「私も・・・私も『普通』ではないのです。・・・むしろあなたの側に近い」これはヴィクトール・クローネルがリオネル・クローネルのクローンだからというだけではない。リオネル・クローネルもまた『普通』ではないということか、と。

「リオネルは当時の遺伝子工学の粋を集めて作られた『人類最高の頭脳を持つ人間』なのです。推定IQは300を優に超えていたと言われています」

 なんと・・・リオネル・クローネルは人工人間とも言える「怪物」であったか・・・リオネルのクローンであるヴィクトールも・・・また・・・怪物。

「エクセル・バイオも『最高の頭脳を持つ人間が起業する会社』という科学者たちによる実験的な側面もあったようです。科学者たちは一切口出しせずに、リオネルの思うとおりに経営させた会社がエクセルシオン・バイオメディカルなのです」



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