表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
234/405

リオネル・クローネル(2)

「リオネルの言った『自我は魂。魂は幽子。幽子はダークマター。ダークマターは・・・コピーされない?』は、正確には間違っています。幽子はクローンとしてコピーされると『空白子(Empteron)』となり活動を停止してしまいます。魂情報とされるPSC(Psycho Strands Code=魂糸符)とクローンのVSC(Void Strand Code=空糸符)は同じ配列なのですから」

 エクセル・バイオが実証済みであるヴィクトールの言葉に、ヘイゼルは質問を投げかける。

「ならば総帥殿やレプリカの魂はどこから来たのだ?」

「魂がどこから来るのかは、科学的には何も判明していません。遺伝子とは違いPSC配列が両親と似ていないことから、魂が別のところから来ていると考える方が自然でしょう。私とリオネルとのPSC配列も全く違いますから」

 ヴィクトールは自分の右肩に目をやる。ヴィクトールの守護霊はリオネル・クローネルだという。今でもリオネルは自分の生末を見守っているのだろうか。

「母体の子宮というのは神秘的なところです。おそらく子宮内で、どこからか来た魂が宿るのでしょう。いえ『宿る』というのは優しい言葉ですね。実際はヘイゼル、あなたと同じです」

「・・・元の魂を喰らって憑依する、とでも言いたそうだな」

 ヴィクトールは黙って紅茶に口を付ける。

「なるほどな・・・故に人工子宮を兼ねた体外育成カプセルで育てたクローンは、魂が宿らずに空白子のままということか」


 リオネル・クローネルはエクセル・バイオのクローン研究の中の「人間のクローン研究」を凍結し、合法的な動物のクローン実験へと移行する。最先端のクローン技術を持つエクセル・バイオと言えども、クローン胚の発生率は100%ではないため実験を繰り返す必要があるのだ。

 1996年に世界初のクローン羊「ドリー」は277個の体細胞核移植を行い、1頭だけが誕生した。発生率は約0.36%だ。ナノテクノロジーの発達した23世紀の最先端技術でも、発生率は50%を下回る。染色体分配異常、遺伝子発現の異常、エピゲノム異常など、要因は様々だ。研究は続けなければすぐに衰退してしまう。


「ちょうどその後ぐらいのことかな、『永遠の輝き団』がエクセル・バイオに接触したのは」

「そのようですね。記録が残っています」

「私の中に残っている同志の記憶によれば、けんもほろろに断られたようだ」

「タイミングが悪かったようですね。もう少し前なら確実に協力したはずですから」

「そこが不思議なのだ。なぜ突然方針を変えたのか。闇社会側から表舞台に返り咲くのは容易ではない」

「推測でしかありませんが、J.ナカオカ博士の発見により魂の科学化を見込んだのだと思います。恐らくクローン事業が倫理的な問題も含め、世間に受け入れられると確信していたのでしょう。人道に反しなければ、誰もがクローンには注目するはずですから」

「先見の明か・・・」

「実際にエクセル・バイオが裏のままだったら、私たちの事業もここまで拡大は出来なかったでしょう」

「拡大できたのは総帥殿の功績ではないのかな?」

「礎を築いたのは先代たちです。私は開花させただけに過ぎませんよ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ