新しい助手(1)
フェノーメノ・モンストローゾがフレディ・サンダースの魂を喰らった後、レイヴェンジャーはフェノーメノが乗っ取ることとなった。フェノーメノはそのままレイヴェンジャーをエクセル・バイオ本社へと移動させた。
ヴィクトール・クローネルはレイヴェンジャーを宇宙貨物シャトルに積載し、アレックス・カインシュタインが代表を務める「錬金術研究所(Alchemia Institutum)」へと送付した。追加の助手を乗せて。
「カイン先生、もうすぐシャトルが到着するようです」
「ボクらは幽体離脱で憑依転生できるからね。ノータイムで地球からここまで来れるけど、3Gは瞬間移動できないからね。物理法則に則って、運ぶしかないよね」
「3G自体が瞬間移動できなくても、機械的に『物体取り寄せ(Apport=アポート)』『物体送信(Asport=アスポート)』ができるようになれば、便利なんですけどね」
「霊子コンピュータが完成すれば、可能だと思うよ。理論はだいぶ詰められてきたからね。まあ、気長に研究していこう。ボクらにはまだまだ優先してやらなければいけないことが多すぎる」
「そういえばいっしょに新しい助手の方もいらっしゃるんですよね?」
「ヴィクトールさんが言うには、ヘイゼルさんの推薦らしいよ」
「へえ~どんな方なんでしょうかね?」
「正直、戦力になってくれるなら、誰でもいいよ。今は猫の手も借りたいぐらいだからね」
現在の錬金術研究所にはカインとリリー以外にも、元「冒険者」で働いていた数十名のオペレーターやメンテナンスの技術者などが勤務している。彼らの仕事は錬金術研究所の設備の維持や増築の方であり、研究開発は実質二人だけでやっているようなものであった。
「設備が整えばオペレーターには実験の検証、技術者には研究したことの製造に回ってもらうけど、まだまだ設備が足りないからね。ボクらの研究だけが先行している感じだ。とはいえ研究はやることが多すぎて、手も付けていない研究も少なくない。その上でさらに最新鋭の3Gの実物を解析しろって言うんだから、ヴィクトールさんは鬼だね」
カインの笑顔でのボヤきに、リリーは苦笑した。
「新しい助手さんは、3Gの解析に役立ってくれるみたいですよ」
「ということは少なくとも幽体離脱ができる人だね。ヘイゼルさんの推薦って言うことは、超能力者かな?フフフ・・・腕が鳴るねえ」
「先生・・・助手というより実験体にする気マンマンですよね・・・」
リリーはカインが垣間見せたマッドサイエンティストの一面に軽く引いた。
「本当はヘイゼルさんを分析したいけど、忙しい人だからね。代わりの人はどんな人だろう?すぐに壊れない頑丈な人がいいなあ」
カインの笑顔の裏に狂気が見え隠れしている。
「私はイケメンがいいなぁ・・・」