表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
224/405

捜索(2)

 南太平洋の人口3千人ほどの小さな島国に本社を構える「エクセルシオン・バイオメディカル」社。

 目立った観光資源も産業も無いこの国の国民は、周辺開発という名のエクセル・バイオの援助により太平洋地域で最も高い生活水準を誇る。衣食住の全てが国からの支給であり、全ての質も高い。移住希望者は絶えないが、この国は移住を認めず他国との交流も貿易も無い鎖国状態を国策としていた。したがって国内で外国人が見られることはエクセル・バイオ社外では皆無である。国とエクセル・バイオは完全に隔離されており社員と国民の交流も無いのだが、国民は自分たちの裕福な生活がエクセル・バイオによってもたらされていることを知っているため不満はない。それどころかエクセル・バイオそのものを崇拝し、総帥であるヴィクトール・クローネルを神のように崇めている者さえいる。

 産業スパイがエクセル・バイオへの潜入を何度も試みたものの、その全てが国民の手によって帰らざる人となっていた。「エクセル・バイオに仇為すものの排除は無罪」であり、殺害ですら国民の意思により罪を問われないお国柄だ。故にエクセル・バイオは独自の研究に没頭することが可能となり、卓越したクローン技術を発展させることが出来たのである。

 そして今日も国外からの侵入者が、美しいサンゴ礁が広がる海中へと沈んでいった。


「行方不明となったレイヴェンジャーはまだ見つからないのか!?」

 超大国の大統領府「Trinity Palace」の地下の一角。超大国の大統領補佐官が軍の高官を叱責していた。

「女狐の本拠の領空に入ったことまでは確認済みなのですが、その後の足取りが掴めていません。事故による墜落か、あるいは撃墜されたか・・・」

「撃墜?!レイヴェンジャーが撃墜されるなんてあり得るのか?!あの島国には軍や武力は無いんだぞ!!」

 人口3千人の島国には国軍もなく、他の島嶼国のように軍隊を大国に依存することもなかった。他国の侵略を許していないのは、徹底的な鎖国とエクセル・バイオの知略のおかげでもある。25世紀の地球では、各国が慢性的な食糧不足に陥っていた。クローン食肉を牛耳っているエクセル・バイオに逆らえる国は決して多くない。

「GBUシステムの不具合か、脳波リンクに異常があったのかもしれん。ダイバーはまだ帰還できていないのか?」

「はい。もうすぐ憑依限界に達するはずですが、魂の帰還はされていません」

「むぅ・・・本人に話を聞くのが一番早いのだかな。諜報部は何している?」

「それが・・・その・・・」

「何だ!?ハッキリ言え!!」

「あの島国に潜入を試みた諜報部員の全てと、連絡が取れなくなったそうです」

「何だと!?我が国の優秀な諜報部員が?!」

「恐らく全員消されています」

「むぅ・・・となるとレイヴェンジャーは・・・?」

「十中八九、女狐の手に落ちたかと・・・」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ