激突(4)
《・・・お前は、仲間を散々殺しやがったんだ。俺はお前を絶対に許さない!!フェノーメノ・モンストローゾォォォ!!》
《フェノーメノ・モンストローゾとは?何者だ?》
《少尉が知らないのも無理ありません。フェノーメノ・モンストローゾとは暗殺組織『永遠の輝き団』の親玉であり、我が国の諜報部員を散々殺しまくった悪党ですよ!!》
「悪党呼ばわりとは心外だな。あれは『仕事』だ。恨むなら私に依頼した者にしてほしいのだが」
《黙れ!!悪党!!貴様に殺された同僚、先輩たちの仇を、今ここで討ってやる!!》
格闘タイプのサンダース軍曹のレイヴェンジャーが、両腕を上げてボクシングのファイティングポーズを取る。
《ここは私に任せてください。少尉は曹長を連れて戦線離脱の準備を。少尉たちの武器ではヤツに通用しませんから》
《し、しかし・・・》
《私にはこれがあります》
サンダース軍曹のレイヴェンジャーが腰に両手を回し、四角い箱のついたナックルダスターのような武器を両拳に装着した。通称ではメリケンサックとかカイザーナックルとか呼ばれる武器であり、背中のバックパックとホースのようなパイプで繋がれている。
《この「Gナックル」ならば通用するはずです。フェノーメノ・モンストローゾは女狐の配下。今ここで滅しておかないと、我が国の障害となる敵です!!さあ、少尉たちは早く離脱を!!》
《・・・了解した。・・・サンダース軍曹、死ぬなよ!!》
キアマイヤー少尉は逡巡した後に撤退を選んだ。フリード曹長は気を失ったままであり、彼を捨て置くこともできないからだ。フェノーメノ・モンストローゾは2基のレイヴェンジャーが離脱していくのを、大人しく眺めている。
「・・・サンダース軍曹もいっしょに離脱してくれれば、私も見逃したのだがな。・・・逆に好都合か?私が敬愛する総帥殿を『女狐』呼ばわりしたことを、後悔させてやろう」
フェノーメノ・モンストローゾの周囲に禍々しい空気が集められていく。肉眼レベルでは見えないものの、霊子レーダーには集束する霊子が表示されていた。アクアシルバーが網羅したレイヴェンジャーの肌が泡立つような感覚に襲われる。一般的に言う「鳥肌」だ。ロボットに過ぎないのに妙に生々しい。レイヴェンジャーに排泄機能が無くてよかった。失禁していたかもしれない。
「ほう・・・耐えるか。少々多めの殺気を籠めたのだがな。これでは精神干渉はできんか。・・・さすがだと褒めておこう!!」
黒いローブが舞い上がり、猛スピードで頭部に取りつき手を翳す。サンダースの顔面が炎に包まれた。パイロキネシス(Pyrokinesis=発火能力)によるものだ。かつてサンダースが諜報部に所属していた頃、同僚や先輩が焼死体となったという報告を何度も耳にした。全員これにやられたということか。
《効かぬわ!!》
レイヴェンジャーには肌感覚が備わっているものの、ある一定の感度以上の感覚は制御される。灼熱の炎に包まれても「温かい」ぐらいにしか感じないのだ。人間では太刀打ちできない化け物相手でも、レイヴェンジャーなら戦える。
「炎も耐えるか。フン、面白い。レイヴェンジャーの実力とやらを見せてもらおうか」