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3G解析(1)

 南海のリゾート地の孤島の一角に、エクセル・バイオは本社を構える。情報インフラが隅々まで整備された西暦2203年に設立されたため、本社にとって人の往来の利便性は重要ではなくなっていた。むしろ孤島ならではの研究や、情報の秘匿が容易であり、全世界に支社がある巨大企業にとって利点しかないのである。

 アビィとの養子縁組を解消したヴィクトール・クローネルは、生活の大半を本社で過ごしている。付き添うようにユリ・アルベリスと佐藤洋子の両名も、拠点を本社に移していた。超大国による3Gの公開デモンストレーションを受けて、ヴィクトールは主要メンバーを本社に呼び寄せている。

 複数のモニターがある会議室に集まったのは、ヴィクトール、ユリ、洋子に神出鬼没のヘイゼル・ブランカ。そして・・・

「どうしてボクまでここにいるのかな?」

「確かにカイン先生はエクセル・バイオの人間じゃないですけど、今後は総帥様のお考えをカタチにしていく重要な人物です。ここにいるのは当然です」

 困り顔のアレックス・カインシュタインの腕にしがみついて力説しているのはリリー・アルベリスである。二人はアステロイドベルトにある「錬金術研究所(Alchemia Institutum)」のα基地から憑依転生にて強制参加させられていた。

「・・・ひょっとして、私といっしょは嫌ですか?」

 リリーは豊満とは言えない胸の谷間にカインの腕を埋め、潤んだ目でカインを見つめる。

「そ、そういう意味じゃなくて・・・」

《リリー・・・あんた、ちょっと見ない間にあざとくなったわね?》

 ユリがリリーだけに伝わるようテレパシーを飛ばす。

《ユリもいい加減若くないんだから、女の武器でも磨いたらどう?》

《若くないのはお互い様でしょ!!双子なんだから》

《カイン先生に双子の兄弟がいなくて残念でした。ユリもいい人見つけなさ~い》

 リリーが心の中で軽く舌を出すと、ユリは悔しそうに「ギリリ」と音がしそうなほどの歯軋りをリリーの脳裏に見せる。

「ふぅ~、二人ともそれぐらいにしておきなさい。ヨーコが呆れていますよ」

「ふぇ?あ、あたし呆れてなんていませんよぉ」

 突然、名指しされて驚く佐藤洋子。しかしユリとリリーは別の意味で驚いていた。二人は二人だけに伝わるテレパシーで会話していたのである。リアクションもテレパシーによるものだ。なのにヴィクトールは察しているのである。よほど洞察力が鋭いのか、または二人だけのテレパシーを傍受できるほどのESP能力を持っているのか。

「さあ?どうでしょうね?」

 ヴィクトールが珍しくいたずらっ子のような笑顔を見せた。



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