霊半導体(2)
霊子は全ての生物の魂のエネルギー源として存在している。ならば霊子をコントロールする霊半導体も、生体組成組織が鍵になるはず。霊子が体内水分に存在することはすでに判明していたが、体内の霊子の流れというのは正確には判明していなかった。カインシュタインはESPを研究する超心理学や、霊的現象を研究するスピリチュアル学も導入して、情報を収集し詳細を徹底的に調べ上げた。
結果、体内の水分の60~65%を占める細胞内液で生成、貯蔵されることが明らかとなる。さらに血液中の水分である血漿が脳や指先などに霊子を集める働きをしていた。
「この細胞内液と血漿を利用すれば、いい感じのモノが出来そうだとは思わないかい?」
「言いたいことはわかりますが、これをどう霊半導体化させるのですか?」
「普通の半導体と同じように考えてるんだ」
N型半導体はシリコンなどの純粋な半導体材料に、リンやヒ素などの5価元素(5つの価電子を持つ元素)を少量添加して作られる。P型半導体も同様にシリコンなどの純粋な半導体材料に、ホウ素やアルミニウムなどの3価元素(3つの価電子を持つ元素)を少量添加して作られるのだ。
「ということは『ウルツァイト・ニトライド』に添加するのですか?では月までルナイトを採掘しに行くのですか?」
ルナイトとは22世紀に月で発見された地球には存在しない鉱物資源である。
「ハハハ。リリー君は専門外のこととなると素人みたいなことを言うんだね。ルナイトは月の大地と外宇宙隕石との衝突で生成された鉱物だよ?このアステロイドベルトを探せば、いくらでも見つかるとは思わないか?」
「あ、なるほど」
ウルツァイト・ニトライド生成過程の窒素とルナイト合金を高温高圧下で化合させるときに、細胞内液成分と血漿成分をそれぞれ添加する。それらをウルツァイト結晶構造に形成し、2種類の霊半導体を作ることにカインシュタインとリリーは成功した。
・「イントラセルラー・ウルツァイト・ニトライド(Intracellular Fluid Wurtzite Nitride)」細胞内液(Intracellular Fluid)成分をウルツァイト・ニトライドに添加し作られた霊半導体。霊子を貯蔵しやすい為に、電子が多いN型半導体と似た性質を持つ。「I霊半導体」と呼ぶこととした。
・「プラスマ・ウルツァイト・ニトライド(Plasma Fluid Wurtzite Nitride)」血漿(Plasma Fluid)成分をウルツァイト・ニトライドに添加し作られた霊半導体。霊子を移動させやすく、ホールが多いP型半導体と似た性質を持つ。「P霊半導体」と呼ぶこととした。
半導体のPN接合と同様に「IP接合」させることにより、霊子を特定の方向にのみ流すなどの制御が可能となり、霊子回路CPU(Central Processing Unit=中央演算処理装置)の基盤も作成可能となった。
「ここから先はボクらじゃなくても、霊子コンピュータは作れるはずだよ。後は他の人に任せて、ボクらは休暇を取ろうよ」
「だったら、地球に行きましょう。新作スィーツがあるらしいですよ」
「え?ボクも幽体離脱して転生するのかい?長距離転生は苦手なんだけど・・・」
「たまにはいいじゃないですか。デートしましょう」
リリーはカインシュタインの腕に抱き着いた。