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3G始動(5)

『感覚器官についての確認は、慣れは必要だろうが概ね良好のようだな。次に運動性能の確認をしたい。確かアームストロング少尉は空手を嗜んでいるそうだな。型を試してくれないか?』

『了解しました』

 まずは空手の基本立である「閉塞立ち」から「結び立ち」「並行立ち」へと移行する。動き自体に問題は無い。思った通りに体は動くのだが、力の入り具合が今一つだ。ロボットであり筋肉がないので仕方がないのかもしれないが「力を入れる」という行為が思ったよりも難しい。傍目にはわからないだろうが。半分納得しないまま、アームストロングは空手の型を演舞した。

 自然体から左下段払い。後ろ脚を腰で引きつけ、そのまま引きつけた右足を踏み込みながらの右中段追い突き。

 やはり踏み込む力が足りない。しかし動きはスムーズかつ滑らかで、ギクシャクしたところが全くない。重心も安定し、自分の体よりも関節が柔らかい。これは空手をやろうとしているから違和感を抱くだけであって、ダンスやバレエを熟練者がやったらかなり凄い動きが出来るのでは?

 アームストロングは思考を切り替えて、空手の型を忠実に演舞することに注力した。力の出し入れをスピードの強弱に変え、体の細部の動きを意識した。肩から肘、手首から指先に至るまで繊細な動きの表現。すると明らかに体のキレが変わった。

 アームストロングは軍人らしく身体も大きく、ゴツゴツした筋肉を持つマッチョ体型だ。そのため筋肉が邪魔をして、スムーズな技の切り替えが苦手だったりする。老師の細い体のキレに憧れたものだ。それを3Gに憑依した自分が体現できている。これは・・・すごい!!

 汗一つ、息切れ一つしない体は疲れることがない。疲れによる軸のブレも体幹の乱れも全くない。いつまででも動き続けられる。

 アームストロングは時間を忘れて、空手の演武をし続けた。


 展望デッキに集まった超大国の首脳陣は、アームストロング少尉の憑依した3G「レイヴン1」の動きを見て感嘆の溜息を吐いている。眼下の格納庫で踊るように空手を披露するロボット。頭でっかちで棒人間のような細い体躯の黒いマシンなのに、黒い肌の長身の人間が優雅に踊っているようにしか見えないのだから。

「いかがですかな?パイロットが憑依すると、全く違うモノに見えるでしょう?」

「いや、恐れ入った。これほどまでとはな。何万人ものアリーナを満員にできるぞ」

 空手の演武でアリーナを満員にできるとは思わないが、著名なダンサーならば可能かもしれないと局長は思った。




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