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3G始動(4)

 GBUシステム搭載の新型輸送宇宙船「Cetusクジラ」の艦内は、常に1Gの重力を下方に発生させている。地球上で育った人間にとって、重力というのは慣れ親しんだ安心できるものだ。地に足が着く感覚。3Gの運動性能を確認するには無重力よりも、有重力下の方がわかりやすい。

「アームストロング少尉、ハンガーデッキから下すぞ。転ばないように気を付けてくれ」

 ガコン、と背中のフックが外され、アームストロングは着地する。体感上の高さは10㎝もないだろう。足裏に軽い衝撃を残して、3G「レイヴン1」は仁王立ちした。ハンガーデッキは重厚な機械音と共に格納庫後方へと下がっていく。

「どうだ?体に違和感は無いか?」

 NSSDA長官に問われたアームストロングは、自分の体の感覚を確認する。目は見える。視界は3Gに憑依した今の方が広いようだ。耳は無いが、音は聞こえる。

「音の聞こえ方に違和感があります。私はどこで音を聞いているのでしょうか?」

「頭部に機能を集中させたくなかったので、全身で音を感じるようにしたのだがな。改良した方がいいか?」

「まだはっきりとは言えません。『慣れ』の問題かもしれませんし。ただ声は聞き取りにくいかもしれません」

「了解した。これより私からの指示は『霊子通信』に切り替える。霊子通信は出来そうか?」

「やってみます」

 霊子通信はテレパシーを模した通信システムで、脳に直接声が届く。機械でありながら相手先を選ぶのはスイッチなどではなく、相手を想定した「意志」を感知した脳波と連動していた。

『どうだ、聞こえるか』

 NSSDA長官の声が脳に直接響く。これはこれで違和感があるのだが、声がはっきりと聞こえる上に言っている意味も伝わってくる。誰が言っているかも感覚的にわかるのが不思議だ。

『不思議な感覚ですね』

『そうか?こちらはマイクとスピーカーを使用した霊子通信なので、仕様が違うせいかもしれない。3Gの霊子通信の方が、よりテレパシーに近いのだろう』

『エスパーの感覚ということですね』

『ESPなど超心理学を専門に扱う学校もあるんだ。将来的にはテレパシーも一つの言語として扱われるかもしれんな。体の調子はどうだ?』

 目、耳は確認した。鼻も口も無く、匂いも味も感じることは無い。

『鼻と口は3Gから省くことにした。臭いがきついのはストレスにしかならんし、食べる必要も無いからな。声は出そうとすると霊子通信に繋がるようになっている。少尉の考えていることが何でも伝わるわけではないから安心しろ』

 アームストロング少尉はただ頭で考えることと、テレパシーに似た霊子通信との違いを理解した。実のところ考えていることが相手に伝わるテレパシーに、戸惑いを感じていたのである。自分の考えていることが相手に筒抜けになってしまうのではないか、と。テレパシーに似た霊子通信は、声に出すイメージをしなければ伝わることは無い。アームストロング少尉は軽く安堵した。




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