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 霊導体(Spiritron Conductor)「アクアシルバー(AquaSilver)」と霊半絶縁体(Spiritron Semi-Insulator)「ウルツァイト・ニトライド(Wurtzite Nitride)」の開発は、霊子回路開発より先にGBUシステム(Gravity Controller and Black Hole Engine Unified System=重力コントローラとブラックホールエンジンの統合システム)の能力を飛躍的に向上させた。

 アクアシルバーとウルツァイト・ニトライドの登場によって「霊子バッテリー(Spiritron Battery)」が開発されたからである。

 従来のGBUシステムに於けるエネルギー源は、硝酸銀水溶液に霊子を貯留させた硝酸銀霊子水であった。導体として不完全であり絶縁体も無かったので、出力が安定していなかった。霊子バッテリーはウルツァイト・ニトライドの箱の中にアクアシルバーの網を張り巡らせ、超純水を満たして作られたものである。ウルツァイト・ニトライドで囲うために中の霊子を圧縮して貯蔵することが可能となり、GBUシステムの安定した高出力化がついに実現した。

 

 西暦2455年3月。ブラックホールエンジンの出力が安定したことにより、ISCOは西暦2399年に宣言された「地球圏でのブラックホールエンジンの実験禁止」を解除した。ただし地上及び地球の大気圏内は、ブラックホールエンジンの使用禁止のままだ。理由はブラックホールエンジンそのものより、重力コントローラによる「Gシールド」が危険すぎるからである。

 ISCOの決定は超大国主導の「Gravity Ghost Gear計画」と「G-City計画」を促進させた。「G-City計画」はGBUシステム技術さえあれば実現可能な計画だ。クローン技術を持たない各国が「G-City計画」に力を入れ始めた。特に独善国家が総力を挙げている印象だ。彼らは広大な月の領有地に「G-City」を建設すると宣言した。

 ISCO評議員など周囲は独善国家の宣言に懸念を示した。独善国家の領有地は月の裏側がメインで、他国の領有地はほとんどない。監視の目が届きにくいことも理由の一つだが、そもそも広大な大地をG-City化するのは危険が伴う。そのままGシールドを展開した場合、Gシールドが大地を抉り取ってしまうのだ。Gフィールドの外縁部を覆うGシールドの極地展開ができるようになれば問題ないのだが、現在そこまでの技術は確立されていない。

 独善国家は「月のクレーターが増えるだけ」と一笑に付すが、万が一でも月の軌道が変わり地球へ落下するような事態になれば・・・有り得ない話ではなかった。しかし月がISCOの管轄下にあり、月が「地球の付属ではなく、宇宙の一部」という認識下では、独善国家を止める理屈が存在しえなかった。

 煮え湯を飲まされ続けていた独善国家が、月でのG-City計画推進に「オールイン」してきた状況だ。超大国にも独善国家にブレーキをかける手段も無く、力のあるものが好き勝手に振舞う事態となりつつある。


 発足以来一枚岩だったISCOに不協和音が奏でられ始めた。



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