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 月面はISCO設立以来、ずっとグレーゾーンだった地域だ。

 西暦1967年に「宇宙条約(正式名称: 宇宙空間の探査及び利用を含む宇宙空間における国家活動を規律する原則に関する条約)」が締結され、月やその他の天体は国家の主権の対象とならないとされていた。つまり、いかなる国家も月の一部を自国の領土と主張することはできない。しかし西暦2050年頃から、地球各国は月面に宇宙基地を建設してきた。月の土地の領有権は無くとも、建設された宇宙基地には領有権が存在する。月は誰もが簡単に手を出せない場所であるがゆえに「平和利用」という大義名分のもと、各国は「早い者勝ち」を絵に描いたように月面基地を建設し、月の土地を実効支配していった。

 西暦2200年を迎える頃、化石燃料もリサイクルも限界に達し地球の資源枯渇が問題となる。月の資源価値に目を付けた一部の国は、月の「平和利用」のための月の採掘権を主張した。特に核融合炉の燃料となるヘリウム3は地球にはわずかしかなく、「世界エネルギーの救世主」と称して地球へと大量に輸入させるようになる。化石エネルギーに代わる月エネルギーとして世論は月の資源利用を好意的に受け入れ、結果的に月の領有権は済し崩しのように一部の国々が支配していった。

 西暦2300年代に入ると世界は「富める国」と「貧しい国」とに二極化され、宇宙進出は限られた国家の特権となっていった。宇宙進出している30カ国は、一部の国の反対を押し切り「月の領土条約」を締結した。これは月面基地を建設した場合、月面基地の周囲10㎞を領土として認めるというものだ。月の表面積は約3,793万㎢。アフリカ大陸(約3,030万㎢)よりも大きく、月面より大きな大陸は地球上ではユーラシア大陸(約5,500万㎢)しかないのだ。たかだか1基地に付き314㎢の領土など微々たるもの。月面基地建設には多額の資金が必要なのだから領土など必要経費として認めるべきとの、各国の思惑が条約となった形である。25世紀に入っても地球国家の月面基地は増え続け、まるで囲碁のような陣取り合戦が繰り広げられていた。つまり月は宇宙にありながら、地球の縮図のような国家間の問題を抱えていたのだ。

 ISCOはこれまでの歴史における「国家間紛争」を避けられなかった国連の反省を生かし、国際組織として「国家間の調停や協議」などは行わないのが原則だ。故に本来ISCOの管轄下に置かなければいけない月も、クワメ・アビオラでさえ手が出せないままであった。国家が理事となった現ISCOでも、月はISCOの管轄下に置いていない。自分たちの利権を自分たちで放棄するわけは無いので、当然と言えば当然ではある。

 しかし超大国の理事は「月のISCO管轄下」を理事会にて提案した。

 誰もが、特に国家の評議員たちが「寝耳に水」というような面持ちで驚愕した。




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