G-City計画
西暦2451年1月。
超大国は「Gravity Ghost Gear計画」に続き「G-City計画」を、トリニティ・パレスでの新年最初の大統領スピーチにて発表した。
「G-City計画」とは「Artificial Gravity City(人工重力都市)計画」の略称で、GBUシステム(Gravity Controller and Black Hole Engine Unified System=重力コントローラとブラックホールエンジンの統合システム)を大型化した上で岩石型小惑星に都市を作る構想である。
超大国の提唱したG-Cityモデルは直径100㎞ほどの小惑星を半球状になるように半分にカットし、切断面である平面に都市を築くものだ。中央に巨大なGBUシステムを設置。小惑星全体を半径50㎞ほどのGフィールド(重力フィールド)で覆い、Gトラクション(重力トラクション)にてG-Cityを24時間で一回転させることにより昼と夜を演出することで、地球上と同じ環境を作り出すものである。
敷地面積約7850k㎡の円状の大地の約40%近い3000k㎡を酸素発生用の森林地とし、人口100万人ほどの都市を基本とすると設定していた。NSSDAの最新の研究によると100万人の人口に最低限必要な森林地は300 k㎡としているので、実に10倍もの森林地を設定していることになる。これは他に逃げ場のない閉鎖空間ということで安全マージンをより多く取ったということに加え、森林から採取される霊子の利用も兼ねている。霊子は生命エネルギーなので、少量の採取であれば生体に影響はない。現在利用されている霊子は全て植物から採取されたものであり、G-City計画に於いても自給自足を大原則としていた。
現在の科学力での大きな問題点といえば、直径100kmもの巨大なGフィールドとGシールドを展開し制御する技術だ。GBUシステムの核となるブラックホールは質量1Mt(メガトン=100万トン)から最大1Gt(ギガトン=10億トン)クラスとなり、大型ブラックホール生成技術の確立も必要だ。現在の科学力では最初から1Gtのブラックホールを生成することはできないため、100tクラスのブラックホールに質量やエネルギーを与え時間を掛けて成長させていくしかない。新たなブラックホール生成技術も模索していくことになるだろう。
G-Cityの最大の特徴は長距離運行可能な宇宙船にもなるということだ。Gシールドがあるため武装の必要もなく、Gトラクションは光速の99%の速度での移動が可能となる。豊富な森林地があるため、GBUシステムのエネルギー源となる霊子も自足できる。G-Cityがあれば宇宙移民に必要な地球型惑星を探す必要もなく、宇宙のどこででも暮らすことが容易になるだろう。活動が安定している適当な恒星の衛星軌道に乗れば、光源と熱を確保することもできる。地球上空で浮遊都市とするプランもある。100万人規模の外宇宙探索チームを結成しても良い。
超大国による「G-City計画」の発表は、さらに宇宙時代が身近に迫っていることを世間に実感させることとなった。