超大国の憂鬱
超大国の大統領府「Trinity Palace」の地下。超大国の大統領補佐官と諜報部高官が統合指令本部で複数のモニタ-を見つめていた。
「女狐たちはどうしている?」
女狐とは、エクセル・バイオの総帥「ヴィクトール・クローネル」のことを揶揄する隠語だ。「CROUN」買収に於いて30兆Crdという大金を費やされたことから、超大国首脳部が使うようになった。
「宇宙研究施設の設備の大半は、極東の研究施設へと移設したようです」
「極東はクローン法違反で女狐を追い込まんのか?」
「我が国だけでなく国連からも極東へと働きかけているのですが・・・」
「動かんという訳か」
「極東は貧しいですから」
「大義より実を取った、というわけだな?」
「はい」
「フン、女狐は金だけは持っているからな。極東を買収したか」
「・・・そのようで」
「ウチからふんだくった30兆は回収できんのか?」
「女狐の本社は南海のリゾート地です」
「ちっ、彼の国は無税か。では金はどう動いている?まさか死蔵させているわけは無かろう?」
「スミスに投資したようです」
「・・・そういうことか。スミスの動きが激しくなるわけだ」
「スミスは女狐の手の内に落ちたと言えるかと・・・」
「・・・さもありなん。ならば、いっそのこと女狐を『消す』ことはできんのか?」
「我らの全て、灰燼に帰すのが関の山でしょう」
「なんと・・・それほどか?」
「・・・補佐官は御存知ありませんでしたか?」
「何を、だ?」
「補佐官は『永遠の輝き団』というのを、耳にしたことはありますか?」
「・・・ただの御伽噺ではなかったのか?奇術や魔術を使うとか」
「実在しているどころか、裏では有名ですよ」
「裏で・・・有名・・・?」
「異能を扱う『最強の暗殺集団』として」
「その『永遠の輝き団』がどうしたというのだ?最強の暗殺者ならば、そやつを女狐にぶつければよかろう」
「・・・『永遠の輝き団』は女狐の配下です」
「!!」
大統領補佐官は声も出せずに、ずり落ちるように椅子の背もたれに埋もれた。
「・・・まんまと女狐にしてやられたわけか」
「・・・はい」
「女狐め・・・最初からISCOを除名になるよう絵に描いていたようだな」
「諜報部として、そこまで掴めませんでした。面目次第もございません」
「貴様のせいではない。私もそこまで読めなかったからな。・・・完敗か」
「いえ、『3G』で巻き返せるかと」
「・・・足りぬわ。もっと大きな計画をぶち上げねばならぬ。NSSDAのケツを蹴飛ばせ。『壮大な計画案を絞り出せ』とな。民間でも敵国でも、使えるものは何でも使え」
「承知いたしました」