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大統領演説(2)

 雲一つなく突き抜けるような冬の青空に、観衆の大歓声が響く。中心に聳えるトリニティ・パレスを背にし、大統領は演説を続けた。

「重力コントローラの役割は移動だけではない。300Gの重力シールドを纏うことで、如何なる物理的光学的な衝撃をも無効化する。我々の知る限り、300Gの重力の壁を貫ける物質は存在しない。つまり重力コントローラを装備した3Gには、行けない場所はないと言える。有重力無重力は問わず、酸性雨が嵐の如く降り注ぐ木星の大気だろうが、灼熱の金星の大気だろうが、如何なる環境下でも3Gならば調査探索開発をも可能になる。まさに3Gこそ、宇宙開発に於ける切り札なのだ!!」

 観衆の大歓声は、さらに大きくなる。大統領は満足そうに頷きながら、歓声が収まるのを待った。

「・・・しかし派手で万能に見える3Gだが、その優れた能力は重力コントローラだけではない。3Gは『霊子レーダー』を装備している」

 ここで大統領は報道陣と観衆の反応を見渡す。キョトンとして意味がわかっていない者もいれば「おお~」と驚いている者も勢いで言っているだけのようだ。しっかりと霊子レーダーを理解している者は少数派だろう。

「諸君は『霊子』というモノを、一度は耳にしたことがあるのではないのかね?『霊子』とは、かつて『変人』と呼ばれノーベル賞受賞目前で惜しくも亡くなられた『J.ナカオカ』博士が発見し、ベストセラー作家でありノーベル文学賞を受賞した『ナディヤ・カザンスカ』博士が一般に広めたエネルギーを運ぶ素粒子だ。我々人間の魂のエネルギーの担い手であり、光よりも圧倒的に速い霊子は何光年離れていても一瞬で到達することが出来る」

 観衆や報道陣の中でウンウンと頷いている者がいる。大統領は彼らを見つめるように、演説を続けた。

「重力を含むあらゆるモノに阻害されない霊子の研究は、宇宙開発になくてはならないものと言えよう。我々は我が国の最高峰の頭脳を結集して、霊子を電子に代わる未来の機器として活用させることを約束する。霊子レーダーも霊子機器の一つに過ぎない。諸君らには馴染みのない機器となるが、霊子機器の素晴らしさはいずれ諸君らにもわかるはずだ。期待してほしい」

 観衆から拍手が沸き起こる。表情を見る限り半信半疑なものがほとんどだ。雰囲気で拍手をしたのが演台からでもわかる。とはいえ霊子研究は現物を体験しない限り、一般人にとって利便を理解するのは難しい。霊子研究というのは科学者の熱気とは裏腹に、一般人にはそこまで受けがいいものではないようだ。しかし「今はこれで良い」と自らを納得させる大統領であった。



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