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大統領演説(1)

 2448年1月。

 超大国恒例、新年最初の大統領スピーチ。大統領府「Trinity Palace」の中庭にステージが設けられ、背後には国旗が冬の青空に高々と掲げられていた。

「Trinity」は「三位一体」を意味し、政府、国民、軍の三つの柱が調和して超大国を支えていることを象徴するように大統領府に名付けられたものだ。

 壇上の後方には閣僚、科学者、軍の高官が並び、中央には銀髪をオールバックに固めた精悍な表情の大統領が演台に立っている。ステージの前には多数の報道陣と新年を祝うために訪れた世界各国の高官、招待された著名人など多数の人々が、大統領のスピーチを見守っていた。

「親愛なる国民の諸君、そして世界中の友人たちへ。こうして新年を迎えられたことを皆で祝おう」

 厳粛な中にも祝福の拍手が巻き起こる。

「今日は我が国にとって、いや全人類にとって歴史的な日となると誓おう。ここ『Trinity Palace』から、我々は新たな未来への一歩を踏み出すのだ。私は誇りと喜びをもって、我が国の新しい宇宙技術計画『Gravity Ghost Gear計画』を発表する!!」

 盛大な拍手と歓声が鳴り響く。大統領は歓声が治まるのを笑顔で待った。

「我々は『Gravity Ghost Gear計画』を『3G計画』と呼んでいるが、3Gは重力子研究、霊子回路研究、そしてクローン技術研究の粋を結集し、宇宙探査と開発の新たな時代を切り拓くものである。さらにこの計画は、三つの柱、すなわち政府、民間企業、そして学術研究機関の連携によって実現される。これこそが正に『Trinity Palace』の名にふさわしい、三位一体の力を象徴するものであろう!!」

 大統領は後方に聳える「Trinity Palace」を紹介するがごとく、右手を大きく仰いだ。

「3Gは18フィート(約5.5m)ほどの人型ロボットでブラックホールエンジンと重力コントローラを搭載する。ブラックホールエンジンと重力コントローラは重力子研究の賜物だ。ブラックホールエンジンは莫大なエネルギー出力を誇り、重力コントローラは今までにない高精度かつ高速移動を可能とする上に過酷な環境をも克服する、これまでの常識を覆す画期的なシステムだ。諸君らの上空を見たまえ」

 大統領が空に向けて手をかざすと、どこからともなく黒い球状の物体が現れ、空を縦横無尽に動き回る。報道陣のカメラが上を向き、観衆から次々とシャッター音と眩いフラッシュが煌めいた。

 黒い物体の動きは、さながら古来より目撃されたUFOの動きそのものであり、上下左右を鋭角的に行ったり来たりしていた。観衆の興奮とざわめきの中、黒い物体は彼方へと飛び去っていく。

「これはまだ試作品に過ぎないが、我々の技術は諸君らの見た通りだ。夢に描いていた未来は、もう手に届くところまで来ているのだ!!」

 割れんばかりの歓声がトリニティ・パレス全体を包み込んでいた。



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