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ISCO理事会(1)

 ISCO新体制になってから、初の理事会。いや、これまでISCOには「理事」も「評議員」もいなかったのだから、新生ISCOとでも呼ぶべきか。

「ISCOの財政の詳細を調べさせてもらいました。収入は各団体からの供出金のみ。これは、まあ、営利団体ではないので致し方ないでしょう。国家収入が税によって賄われているのと同じことです。問題は支出の部。研究団体への支援及び補償の額が、年々倍増しています。特に前年度は事故の補償が10倍にも膨れ上がり、ISCO始まって以来、初の赤字を計上しました」

 アビオラCUEOが凶事に倒れ、代行が立てられた1年間。特にブラックホールエンジン開発事業の事故が相次いだ。超大国の理事の発言に、古豪国家の理事が続く。

「私たち地球国家がISCOの運営に携わるのは初めてなので、企業理事の方々に伺いたいのですが。体制も変わったことですし、支援及び補償の体制も見直すべきではありませぬか?」

「研究団体なんぞに自由にやらせるから、いたずらに財政を圧迫していくのだ。古来より我ら国家が主体となり、公営事業として地球も宇宙も発展させていったのだ。国家と企業、ましてや研究団体なんぞとは体力が違う。我らに任せておけばよいのだ」

 独善国家が威圧的に睨みを利かせた。

「まあ、その辺り、我らはまだISCO運営に関しては新参者ですので、追々体制を整えていくとして。まずは、このままでは近いうちにISCOの財政は破綻します。早急に支援体制を見直すべきかと。いかがですか?CUEO」

「うむ・・・この場に研究団体がいないので、何とも言い難い案件ではありますが・・・」

 エネルギー企業「F・E」の会長であるCUEOの口は重い。代わって軍需企業「A・テック」の会長が理事として口を挟んだ。

「具体的にどう見直すのか、原案を出してもらいたい。審議の是非は原案を見なければ、返答のしようもないであろう?」

「まあ、それもそうですな。我らが言いたいのは『研究団体にもリスクを負わせるべき』かと。例えば事故を起こした翌年の支援をカットするとか、賠償金の一部を負担してもらうとか。単純に『支出を減らせ』と言いたいわけです」

「我らに任せれば、話は早いぞ。我らならば、支援も補償も自分たちでできるからな。ISCOの財政を圧迫させずに済むではないか」

「いや・・・それでは研究団体が自由に研究をできなくなるのでは・・・」

 CUEOが国家の提案を否定する。F・Eは研究団体の支援を、開発機器の提供というカタチで積極的に推進していたからだ。

「自由?『好き勝手』の間違いではありませぬか?彼奴らは好き勝手やった挙句の尻拭いをISCOにさせているに過ぎぬのですよ?規制とリスクを負わせることで、制御せねばならぬ」

「それが嫌ならISCOから脱退すればいい。簡単ではないか。支出は減らせるし、いいことづくめだな」

 独善国家の理事が、口髭を弄りながらニヤニヤ笑う。


「いやいや・・・国家という輩は、何ともケツの穴の小さいことで」

 企業理事が口を噤む中、挑発するように発言したのはエクセル・バイオの若い理事「ヴォッタ・アクアグリーン」であった。




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