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ISCO評議員

ISCO(International Space Cooperation Organization=国際宇宙協力機構)はクワメ・アビオラ元CUEO(Chief Unified Executive Officer=最高統一責任者)の遺志により、加盟国、企業、研究団体の代表者による評議員制へと移行した。各団体1名の評議員による合議制である。現在のISCO加盟団体の内訳は、地球上の国家が30か国、企業80社ほど、大学を含む研究団体は50団体にも及ぶ。これまでのクワメ・アビオラCUEOのワンマン体制から、200名以上の評議員制へと変革されたのである。

 降って湧いたような宇宙進出の主導権を握るチャンスに、地球国家は色めいた。各国家は発言力を重視して、元国家元首や元大臣などの大物を評議員として選出する。評議員は理事の出した運営案に「賛成」「反対」の票を投じることしかできないが、7人しかいない理事になれば運営案の作成に口を出せるのだ。理事は評議員同士の投票により選ばれるので、各国家が選挙に強い人物を評議員とするのは当然とも言えた。

 オリンピックやワールドカップなどの誘致を頻繁に行っている国家にとって、選挙のロビー活動は得意とするところだ。半年間の準備期間の後で実施された理事選挙では、3人の地球国家の評議員が理事に当選した。他の4名は「エクセル・バイオ」、宇宙物流大手「セレス・ロジ」、宇宙軍需産業トップの「A・テック」、エネルギー業界最大手の「フュージョンエナジー(F・E)」の評議員が選出された。ちなみに研究団体は理事に立候補すらしていない。ISCOの運営ともなると政治的手腕も要求されるため、余計な派閥争いとか利権争いを避けたようだった。

 

 CROUNの定期会合が開かれ、当然の如くISCOの理事選のことが話題に上る。

「クローネル殿は何故、評議員ではないのですか?」

 エクセル・バイオのISCO評議員は「ヴォッタ・アクアグリーン(Votta Aquagreen)」という20代の若者である。エクセル・バイオ以外の3社はこのCROUNの会合に出席している、それぞれ各社の代表が評議員も務めていた。

「アクアグリーンも有能ですよ」

「いや、しかし・・・彼のような若者では国家の評議員に舐められてしまうのでは?」

「ああ見えて、アクアグリーンは若者ではありません。男性クローンの実験で、奇跡的に一致率が93%になった弊社営業の重鎮です。STARシステムにより、憑依実験が容易になったおかげですね」

 ヴィクトールは嘘を吐いた。

 ヴォッタ・アクアグリーンの正体は、新たに仲間になったばかりのヘイゼル・ブランカ。元暗殺者の死霊リッチであり、誰よりも長命で10人以上の魂の英知を持つ「怪物」である。

 エクセル・バイオの研究施設「冒険者」にて育成しているCROUNメンバーの男性クローンを整形した肉体に、ヘイゼル・ブランカの分体が憑依したものだ。このCROUNメンバーはクローンに憑依転生を施す前に事故で亡くなったために、クローンの使い道が無くなったものを利用したのである。ヘイゼル・ブランカは有り余る霊力により、自らの魂を分割して複数人に憑依することが可能であった。ヘイゼル・ブランカであれば、どんな不測の事態にも対応できる。

「私はしばらく地球に引き籠ろうかと考えています。子育てが忙しいので」



ヴォッタ・アクアグリーン(Votta Aquagreen)はクワトロ・バジーナ(Quattro Vageena)のアナグラムです。

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